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【シックスネーションズ】フランス代表がシックスネーションズ開幕戦に向けたスコッドを発表。35歳のスリマニが復帰。昨夏スキャンダルを起こしたオラドゥ、ジェグーの名も。

2025.01.19

2015年、2019年のW杯2大会に出場したスリマニ。現在はアイルランドのレンスターでプレーする(Photo/GettyImages)



 フランス代表は、シックスネーションズ開幕戦(対ウェールズ)を準備するための42名のラージグループを発表した。

 今回の最も大きなサプライズは、35歳の右プロップ、ラバ・スリマニの代表復帰だ。スリマニは2013年11月のNZ戦で代表デビューして以来、レ・ブルーのスクラムを支えてきたスクラム・マエストロだが、2019年ワールドカップを最後に代表から遠ざかっていた。

 7年間在籍したクレルモンを昨季末に退団し、今季からアイルランドのレンスターでプレーしている。フランス人選手初である。新しい環境でのラグビーも生活も楽しみながら、試合でも活躍しており、先週のチャンピオンズカップの試合でもラ・ロシェルのスクラムを苦しめた。

 今回のスリマニの選出は、シックスネーションズでタイグ・ファーロングが不在になる期間、彼を当てにしていたレンスターのコーチ陣にもサプライズだっただろう。

 スリマニの代表復帰の背景には、プロップの人材不足がある。通常、右と左のプロップは各3人ずつ招集されるが、今回は各4人が招集されている。左プロップのシリル・バイユは昨年6月の足首の負傷から復帰して間もなく、トゥールーズで2試合出場したばかり。2番手とされているジャン=バティスト・グロは、昨年11月のANSでかなり高い評価を得たものの、最終戦のアルゼンチンとの試合で負傷し、今週末にトゥーロンで戦列復帰が見込まれているが、2人ともテストマッチレベルの試合に耐えられるかはまだ確信が持てない。

 3番手とされているレダ・ワーディーも先週のレンスター戦で肋骨を骨折した。今季トゥーロンで活躍しているダニー・プリゾと、昨夏の南米遠征で評価を上げたジョージ・ベリアが招集された。

 右プロップはさらに悩ましい。先週のレンスター戦の開始30分でウイニ・アトニオが膝の痛みを訴え退場した。その後の検査で問題はないと診断されたが、不安は残る。昨秋、日本戦で代表デビューした期待の若手テビタ・タタフも翌週のNZ戦で負傷し、バイヨンヌで練習には復帰したものの、まだ試合には出場できていない。デンバ・バンバも負傷しており、フランス代表57キャップの経験を持つスリマニは即戦力として期待される。

 さらに、CTBノア・ネネ(20歳)の初選考も注目を集めている。彼は今季、スタッド・フランセからプロD2のダックスにレンタル移籍し、192cm、103kgのパワフルなフィジカルと、スピード(トップスピードで36km/hを計測)、器用なハンドリング、さらに左脚のロングキックで目を見張るパフォーマンスを見せており、16節までで12試合に出場、そのうち7試合で先発、3トライを挙げている。

 その中でも11月のモン・ド・マルサン戦で見せた、6人の敵をかわし、払いのけ、60mを駆け上がったトライは圧巻だ。今大会では出場することはなくても、夏に予定されているNZ遠征でブルーのジャージーを着るネネが見られることが期待される。

 ダックスからフランス代表選手が選ばれるのは2009年以来のことで、フランス協会からこのリストが発表される前に声明を発表してしまうほど、クラブも喜んでいる。

 昨秋、NZ戦の前にグループを離脱し、ファビアン・ガルチエ ヘッドコーチ(以下、HC)との関係が話題となっていたSOマチュー・ジャリベールの名前もある。このリストが発表される前に、『RMCラジオ』に出演したガルチエHCは、ジャリベールとの関係について「些細な意見の相違があっただけ、大きな問題はない」と発言している。

 所属しているボルドーの好調もあり、ジャリベールが今のトップ14で最も調子のよいSOだが、トゥールーズでも司令塔として機能しているSHアントワンヌ・デュポン、1年半ぶりに代表復帰するSOロマン・ンタマック、FBトマ・ラモスのトリオを動かすのは容易ではない。グループに復活したジャリベールのチャレンジが続く。

 物議を醸しているのが、LOユーゴ・オラドゥ(20歳)とFLオスカー・ジェグー(20歳)の代表復帰だ。彼らは昨夏の代表チームの南米遠征中に、現地の女性(39歳)から性的暴行で訴えられ逮捕された。その後、原告側の証言に矛盾があり、証拠不十分として、12月10日にアルゼンチンの裁判所が本件を不起訴処分とした。

 フランス協会は直ちに、「アルゼンチン司法は2人の選手の潔白を認めた。よって、彼らのラグビーのパフォーマンス次第でフランス代表選考対象となり得る」と声明を出した。

 その時から2人の代表復帰の予感はあった。オラドゥは10月5日からポーで、約1ヶ月遅れてジェグーはラ・ロシェルで戦列復帰しており、2人ともチームに必要不可欠な戦力となっている。特にジェグーは、FLシャルル・オリヴォンが右膝靱帯断裂で長期戦列離脱することになり、今大会で試合出場もあり得るのではと、『レキップ』紙は予想している。

 しかし、疑問を抱く人も少なくない。ガルチエHCは同ラジオで「彼らは無罪、よって選考対象になる」と主張する。確かに、法律的には彼は間違ってはいないが、本件はフランスで一般のニュース番組でも大きく取り上げられ、ラグビーのイメージは大きく傷ついた。

『ル・モンド』紙は、「フランスラグビー界は、依然として暗い影に悩まされている。アルゼンチンでの事件や、2024年12月に集団強姦罪で実刑判決を受けたグルノーブルの元ラグビー選手たちの事件、そのほかの司法ニュースを賑わす数々の事件は、ラグビーが提唱するイメージや価値観に泥を塗ってきた」と現状を指摘し、「この招集は、フランスラグビー界が避けることができたはずの論争に再び火をつける」と警鐘を鳴らす。

『フィガロ』紙は「彼らの初キャップの夜に起こった逸脱行為に対して処分を下すこともできたはずだ。明け方まで外出し、大量に飲酒。チームの宿泊所に女性を連れ帰るという行動は、プロスポーツ選手として、また国を代表する選手として模範的な行為からかけ離れている」と訴え、「法の上では問題はないが、道徳的には疑問が残る」と締め括る。せめて、2月10日の控訴審の結果が出るまで待てなかったのだろうか。

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