「これまでのハンセン(HC/ディレクターオブラグビー)の指導に、フォスター(CoHC=共同コーチ)が加わってさらにディテールが深まった。分からないことがあっても明確に答えが返ってきて、迷いなく仕事に全うできる。自信を持ってプレーできると選手全員が思っている」
12月6日にトヨタスポーツセンターで開かれたトヨタヴェルブリッツの開幕前記者会見。第1部に出席したリーダーズグループの一人、WTB髙橋汰地は迷いなく言い切った。
FLウィリアム・トゥポウも「新体制になって新しい選手も多く加わった。昨年からの積み重ねもある。開幕に気持ちを高めていきたい」。
2人のコメントは現在のチーム状況を的確に表していた。
第2部にはスティーブ・ハンセンHC/DORと、新しく加わったイアン・フォスターCoHCが揃って顔を見せた。
2010年代にオールブラックスの黄金時代を築いた2人が同時にメディアに登場するのは、来日以来初めて。2019年からヴェルブリッツに携わってきたハンセン氏だが今季、肩書にヘッドコーチが加わった。グラウンドで世界のトップコーチ2人が指導する体制が整った。
ハンセン氏はフォスター氏を「傑出した指導者。世界のコーチの中でも、ラグビーへの理解度が深い」と全面的に信頼を寄せる。
オールブラックス時代、HCとアシスタントコーチとしてW杯優勝を遂げたが、特に明確な役割分担はないという。
「2人の関係性は陰と陽のようなもの。ゲームに対する考え方や、何をすべきかという判断が一致していて、私が先に話すことがあれば、彼が先に口を開く場合もある。そこにエゴはない」
そのフォスター氏は「ラグビーは複雑だが、シンプルに重点を置いている。選手と話して何が最重要かを絞って指導に取り組んでいる」と言う。そのコーチングは髙橋の言葉とも繋がる。
戦力的にも大きな変化があった。今季は埼玉WK、日本代表で活躍したSO松田力也が加入。プレースキックの正確性はもちろん、ゲームコントロール、キックマネジメントにも長けた日本人司令塔の加入もスタイルに変化をもたらしている。
トゥポウは「松田とはサンウルブズ、日本代表でも一緒にプレーしてきた。彼はスペースを見つける力やボールを運ぶ能力が高く、どういったプレーをどこで使うか明確に指示を出してくれる。FWはアタックマインドを強く持っていく」とこちらも全面的に信頼。
髙橋も「力也さんはキックパスの精度が高い。アタックにオプションを持たせてくれる」とトライゲッターの立場からも期待を寄せる。
チームは12月7日の静岡ブルーレヴズとの試合でプレシーズンマッチを終了した。
フォスター氏は「成果を把握するにはもう少し時間がかかるが、プレシーズンは多くの選手に出場機会を与えた。これは必ずシーズン後半に活きてくる。リーダーシップに関しては確実に成長している」と手応えを語る。
開幕まで2週間足らず。姫野和樹キャプテンら日本代表組はプレシーズンマッチは出場しなかったが、松田は3試合に先発。
2年目を迎えたSHアーロン・スミス、日本代表でもコンビを組んだ茂野海人とHB団を組み、安定したキックマネジメントを見せた。
奥井章仁、村田陣悟、三木晧正のルーキートリオも6~8番でそろって出場。姫野、アイザイア・マプスアのジャパン組、2度目のワールドラグビー世界最優秀選手に輝いたピーターステフ・デュトイとトップ選手が揃う3列を虎視眈々と狙う。
会見で今季の目標を聞かれたトゥポウと高橋は「優勝」と口を揃えた。
ハンセン氏も「1チームしか達成できない偉業で、選手自身がそう言っているのはいいこと。リーグワンは世界の中で全てにおいてトップのリーグだが、タレントは揃っている。一体となって優勝を目指していく」とV宣言をした。