11月24日にモナコで開かれた「ワールドラグビーアワード2024」で、フランス代表キャプテンのアントワンヌ・デュポンが男子7人制の年間最優秀選手に選ばれた。15人制(2021年)と7人制で最優秀選手に選ばれたのはデュポンが初めて。
昨年のワールドカップの後、デュポンが7人制ラグビーでパリオリンピック出場を目指すことを発表した時、必ずしもポジティブな意見ばかりではなかった。「15人制から7人制に転向するのは、そんなに簡単なことではない」、「15人制代表のキャプテンなのに、シックスネーションズに参加しないのは無責任だ」など、彼の決断を批判的に見る意見も聞かれた。
しかし、デュポンが初めて参加したセブンズワールドシリーズのバンクーバー大会でフランスは3位になり、翌週のロサンゼルス大会では優勝した。その後、トゥールーズに戻ったデュポンはチャンピオンズカップで優勝し、翌週にはマドリッドで7人制代表に合流してマドリッド・グランドファイナルでも優勝し、トゥールーズへ戻ってトップ14で優勝を決めた後、7人制に戻りパリオリンピックで金メダルを勝ち取り、国中を熱狂させた。
15人制代表復帰戦となった今回のオータム・ネーションズシリーズでは、プレーとリーダーシップでチームを率いて3戦3勝、約1年の不在をすっかり忘れさせる存在感だった。
「金メダルを首にかけた瞬間、この7人制フランス代表チームと共に過ごした数々の素晴らしい瞬間が蘇ってきた。これはリスクのある賭けだったが、それだけの価値があった。僕の記憶力はそんなに悪くないから、最初の記事を今でも覚えている。当初は誰も信じてくれなかったけど、自分の直感を信じて本当に良かった。自分の選択を誇りに思う。この全てを経験させてくれた仲間たちとスタッフに感謝している」と、デュポンの言葉にやり遂げた満足感と安堵が感じられる。
7人制代表を率いたジェローム・ダレット ヘッドコーチ(HC)も年間最優秀コーチに選ばれた。
「一直線に成長したわけではない。ラグビーは、ジェットコースターのように上昇する時もあれば下降する時もあるからこそ感情を揺さぶる。選手たちが自分の力を最大限に発揮し、素晴らしいパフォーマンスをしてくれ、最後に見事な花火を打ち上げることができた。観客も後押ししてくれて、そこには大きな感動と喜びが溢れていた」
「本当に信じられない」と、このような華やかなパーティーに慣れていない様子でダレットHCは付け加える。
「このトロフィーを手にして、様々な感情が込み上げてきた。自分がどこに住んでいるのかさえ分からなくなったよ(笑)。7人制のコーチがこの賞を受賞するのは初めて。これはオリンピックでのラグビーが認められたということ。このトロフィーは私だけのものではなく、フランス代表チーム全体、そしてクラブとの協力の成果です」と喜びを噛みしめる。
ダレットHCが2017年に着任した時、フランスは13位だった。その後少しずつ順位を上げるも、東京オリンピックの出場を逃し、「挽回するにはパリで金メダルを取るしかない」と心に誓っていた。
この賞をフランス人コーチで受賞したのは、2002年に男子15人制代表のHCだったベルナール・ラポルト以来。2022年に女子15人制W杯で優勝したNZを率いたウェイン・スミス、そして昨年シックスネーションズで全勝優勝を果たしたアイルランドのアンディー・ファレルHCと、世界の名だたる名将と並んで、7人制のダレットHCの名が刻まれる。
今回、男子15人制ドリームチームにはフランスからは該当者がなかったが、男子7人制ではデュポンと、オリンピック決勝でフィジーがキックオフしたボールをタップしてデュポンに繋ぎ、タッチラインぎわを爆走するデュポンから再びボールを受け取って逆転トライを決めたアーロン・グランディディエの2人が入った。女子15人制ドリームチームにSHポリーヌ・ブルドン=サンシュス、女子7人制ではセラフィンヌ・オケンバが選ばれた。
また、男子15人制の年間ベストトライに、今年のシックスネーションズのイングランド戦でノラン・ルガレックが決めたトライが選ばれた。
「フランスらしい、フレンチ・フレアが感じられるトライ。フランソワ(クロス)がラインアウトでボールを奪い、レオ(バレ)が素晴らしいパスをプレゼントしてくれたおかげで、チーム全体の努力の賜物。イングランド相手に、フランスの観客の前で、そして家族の前で、こんな素晴らしいトライを決めることができて最高。忘れられない特別なトライになる」と、蝶ネクタイにタキシード姿で式に出席したルガレックが笑顔で感動を伝える。
また、女子15人制年間ベストトライには、WXVのカナダ戦のFBマリーヌ・メナジェのトライが選ばれた。