早大ラグビー部の佐藤健次主将は、失敗を糧にした。
11月10日に埼玉・熊谷ラグビー場で、関東大学対抗戦Aの筑波大戦を44-7で制した。
7日前に東京・秩父宮ラグビー場で大学選手権3連覇中の帝京大を48-17で下していたが、それがために弛緩するのを引き締めた。
引き合いに出したのは夏合宿での練習試合。8月18日に帝京大に38-14で勝ったものの、25日に天理大に35-64と屈していた。同じ轍は踏みたくなかった。
「夏合宿で帝京大さんに勝って、その1週間後に天理大さんに負けたという反省があったので、1週間の準備を入念にしました」
身長177センチ、体重107キロのHOは、春には日本代表に選ばれたが夏以降はチームにフルコミットする。
代表選手の自己管理能力に感化されて睡眠の質と量にこだわったり、継続的なトレーニングで逞しさが増したりした成果を、このクラブに還元する。その、意思を示す。
対抗戦突入後にコンディション不良で試合に出ない時期があったが、それも肥やしにしているという。会見場で、左右を見回して言う。
「ラグビーに参加している時と一歩引いた時のチームの見え方が違っていて、新たな気づきがあった。(普段のスケジュールでは)ジュニアと言われるグレード(3軍以下に相当する)がどんな練習をしているかを見る機会はなかったのですけど、(欠場期間中に)外で見ている時に個人が頑張っている姿、(当該グループの)4年生が引っ張っている姿を見られたのがよかったのかなと。春先は僕が抜けたらチームとして崩れてしまうところもありましたが、今回は細谷(聖樹=SH)、安恒(直人=HO)とかがいい方向に持っていってくれていて…。チーム力は上がっていると思います」
筑波大戦ではピンチの場面でタックルを重ねた。しばしば突進、ジャッカルといった派手に映る動きが注目されるものの、下働きでも渋く光る。
「きょうが難しいゲームになるのはわかっていた。これは佐々木隆道さん(ヘッドコーチ)が話していたのですが、『チームに波がある時は僕や田中(勇成=FL)がプレーで見せてくれたら皆が落ち着くから』と。それを意識した」
自分には厳しい。
「…でも、もっとターンオーバー(攻守逆転に直結する)タックルができたら。精度を上げていきたいです」
23日には秩父宮で慶大とぶつかる。