「現在の世界最強のチームの一つと対戦するための、怪我人、病人、コンディションや仕上がり具合を考慮した、現時点で可能な限りベストなフランス代表チームだ」
11月16日のNZ戦に臨むメンバーを発表した後に、「これは対戦相手に合わせたメンバー選考なのか? もしくはフランス代表チームがしようと思っていることに合わせたものなのか?」という記者から投げかけられた問いに対するファビアン・ガルチエ ヘッドコーチ(以下、HC)の答えだ。
日本代表戦2試合を含む「オータム・ネーションズシリーズ」
全21試合をWOWOWでライブ配信(アーカイブ配信あり)
まず、右PRウイニ・アトニオの戦列復帰が今週は期待されていたが、10月26日にトップ14のモンペリエ戦で傷めたふくらはぎの回復が進まず、先週の日本戦で代表デビューしたテビタ・タタフが引き続き3番を背負う。
タタフと共に最前列でスクラムを組むのは、左PRジャン=バティスト・グロと、HOペアト・モヴァカだ。グロの日本戦はフランス代表での本人のベストゲームだったと評価されている。モヴァカは、50分にリザーブのHOジュリアン・マルシャンの出場後も、FLとしてピッチに残り80分プレーして“スーパーモヴァカ”ぶりを発揮した。
リザーブも、マルシャン、PRレダ・ワーディ、PRジョルジュ=アンリ・コロンブと、先週と同じ顔ぶれだ。
第2列は、先週の試合で骨盤の腸骨稜を傷め30分で退場し、今週の出場が危ぶまれていたチボー・フラマンが、火曜日から練習に復帰し、トゥールーズのチームメイトのエマニュエル・メアフーと共に連戦する。ベンチには、LOミカエル・ギヤールと、先週はメンバー外だったロマン・タオフィフェヌアが控える。
第3列のフランソワ・クロスが脳震盪で今週は欠場となり、日本戦でリザーブだったポール・ブドゥアンが背番号6をつけ、FLアレクサンドル・ルマット、NO8グレゴリー・アルドリットと並んで試合をスタートする。FLシャルル・オリヴォンがベンチに入った。
HBも変わらず、アントワンヌ・デュポンとトマ・ラモスのトゥールーズコンビだ。SHノラン・ルガレックが復帰し、ベンチで出番を待つ。
CTBでは、先週はベンチスタートだったガエル・フィクーが、今週はヨラム・モエファナと先発し、WTBでもプレーできるエミリアン・ガイユトンがフィニッシャーに回った。
先週、体調不良で欠場したWTBダミアン・プノーは今週も欠場することになった。「合宿所にウィルスがうろついている。PRセバスチャン・タオフィフェヌアもグループを離れて帰宅した」とガルチエHCが伝える。
そこで起用されたのが、ギャバン・ヴィリエールだ。最後に代表戦に出場したのがワールドカップのウルグアイ戦で、16か月ぶりにブルーのジャージーを着る。同じ赤のヘッキャのルイ・ビエル=ビアレと両翼をなす。
FBには、初キャップのロマン・ビュロスが起用された。
「先週15番だったレオ・バレはスタッフの期待に応えられなかったのか?そうでなければ、なぜ日本戦でビュロスにキャップを与えなかったのか?」と記者から質問が飛んだ。
「ロマン・ビュロスは、2021年のオーストラリア遠征、翌年の日本遠征に参加している。また、4年間、所属しているボルドーでも、代表合宿でも力を発揮している。自信を蓄え、確信を持ってプレーしていることが、この3週間の代表合宿でも見られ、ジャージーを掴みにいける位置にいた。レオ(バレ)は、シックスネーションズ、アルゼンチン遠征でいい試合をしていたが、彼のパフォーマンスは競争相手に入り込む隙を与えてしまった。ロマン(ビュロス)にポジションを与える時だと判断した」と選考理由を述べた。
さらにNZ戦でデビューさせることについては、
「この試合に出たくない選手なんてフランスに一人もいない。これは夢の試合だ。ロマンは確信を持っている。フィジカルでもラグビーでも成長した。空中戦にも長けている。この試合でキックが30ぐらいあるだろう。そのうち20を空中戦で争うことになる。エスコートがなくなり、キャッチに行く選手同士の一騎打ちになる。このルールでプレーのスペースが広くなる。一騎打ちは自由なボールを生む。カオスのボールだ。争奪戦に勝っても負けても、このボールを奪えるようにならなければならない。空中戦からトライにつながるケースが多い。これは自由を得るボールなのだ」
この試合はベンチをFW6人+BK2人に戻した。
「オールブラックスと戦うには、運動量を最高に上げ、集団のパワーを最大にしなければならない。先週は45分のボールインプレーで、240のタックルをした。今週は、ボールをまわす、空中戦、ラン、ボールを持たない時の動きなどプレーにもっとバリエーションが加わる。ベンチのメンバーがレベルを維持してくれることを期待している。ブラックスはアイルランド戦では最後の20分、イングランド戦では最後の3〜4分で決定的なペナルティをとっている。彼らは終盤に集団戦で勝っているのだ」
ベンチのBKが2人になったことで、SHとポリバレントな(多機能型の)BKが選ばれ、SOマチュー・ジャリベールがメンバーから外れた。万一の場合はデュポンがSOもできる。
「それは彼の選択だ。誰もが自分の感情を生き、それを自由にシェアすることができる。このプロジェクトはグループ全員のプロジェクトだ。この4週間は2027年に向けての重要な時間。大切なのは揺るがない強い意志。私たちは強い選手を見極めようとしている。ラグビーやフィジカルだけでなく、良い時も困難な時も乗り越えられる気持ちの強さを持った選手だ。高いレベルを維持し、さらに成長してゆくための心身の持久力を持つ選手が必要なのだ」
目の前にいる記者にではなく、ジャリベールに話しているようだった。
ジャリベールは23人のメンバーには入らなかったが、負傷者が出た時の補欠としてチームと帯同するメンバーに入っていた。しかし、本人がガルチエHCに「ボルドーに帰って頭を空っぽにしたい」と願い出てリリースされた。
ガルチエHCはこの合宿前にジャリベールに「ロマン・ンタマックが今大会欠場になるが、君はスタメンではない」とすでに伝えていたと現地では報じられている。
「マチュー(ジャリベール)はこれまで、ベストを尽くし、彼の才能でチームに貢献してくれた。これからも続けるだろう…、もし彼が望むのなら。決めるのは彼だ」