2年生にして近大の正SHを担う渡邊晴斗は高校時代、ずっと二番手だった。
当時、報徳学園で背番号9をつけたのは京産大の村田大和。
U20日本代表の経歴を持ち、エディー・ジャパンとなってからは日本代表のキャンプにも参加している。
渡邊は2年時からメンバー入りしていたが、最後まで村田との序列をひっくり返すことはできなかった。2人が3年生の時に、報徳は初の花園準優勝を成している。そのチームを村田は文字通り、けん引していた。
「自分たちの学年が準優勝した嬉しさよりも、試合に出られない悔しさの方が大きかったです。ただ、それが今頑張れている原動力でもあります」
強大なライバルを前にしても腐らなかった。「成長できた3年間でもあった」と誇る。
母・貴久子さんがその努力を後押ししていた。
「報徳までは自分の家がある八尾から1時間半かけて毎日通っていました。朝練を継続してやろうと決めていたので自分は5時半に起きていましたが、母は5時に起きてお弁当と朝ごはんを作ってくれました。夜も帰りが遅くなるのをずっと待ってくれていました。なので、試合に出る姿を見せて恩返しがしたいという気持ちはずっとあります」
「同級生にも恵まれていたからこそ試合に出たかったですし、同級生の頑張りを見ていると悔しくてしょうがなかった」と続けた。
10月20日におこなわれた同志社大戦では、その願いをひとつ叶える。敵味方の関係にはなったが、柏村一喜(FL)とともに同じグラウンドに立てた。
「帰り道が途中まで同じこともあって、ずっと一緒に自主練をしていました。2人ともスピードに課題があったので、陸上部の短距離の子に教えてもらいながらスピードトレーニングは特にやってきました。それでめちゃくちゃ足が速くなったし、今では武器になっています」
68-14と大勝したその試合で、渡邊の活躍は光った。
序盤に50:22キックを決めると、その直後にも自らランで仕掛けてラインブレイク、トライの起点になった。後半に入っても緩急をつけた球捌きで相手を翻弄し、サポートプレーでアタックを繋いだ。
「良い緊張感と良い自信を持って臨めました。前を見てプレーできましたし、シーズン中での成長は実感しています」
高校時代と同じように、大学でも仲間の存在は大きい。
「今年の4年生にはよくしてもらっていますし、その4年生たちと選手権に行きたい、関西一になりたいです」
キャプテンの中村志(FL)とNO8の古寺直希の名前が挙がる。
「タックルは志さんに教えてもらっていますし、古寺さんはラグビーIQはすごく高い選手です。自分のプレーをみんなとリンクさせるために、アタック面でのアドバイスをもらっています」
成長曲線は右肩上がりだ。
1年時はCチームからのスタート。高校で培った忍耐力はここで生きた。
「継続して練習するのは得意です」
ケガもなくシーズンを過ごせたことで、チャンスはめぐってきた。関西リーグの開幕節からメンバー入りし、短いプレータイムの中で好アピール。シーズン終盤には念願の背番号9をつけた。
以来、その座を死守している。
11月4日の京産大戦でも先発を託された。相手のメンバー表に村田の名前はなかったが、あくまで個人的な思いは胸の奥にしまう。
「今はチームのために、4年生のために活躍したいです。ほんまに努力されている先輩たちが多いですから。その人たちのために勝ちたいです」