エディー・ジョーンズHCの評価は上々だ。
「丁寧な仕事、ハードワークを見せてくれました」
松永拓朗が日本代表デビューを果たした。
日産スタジアムに6万57人が集まった、10月26日のニュージーランド代表戦である。
「すごく嬉しかったです。オールブラックスと戦えるのはやっぱり特別。自分は持っているなと思いました」
後半15分に天理大の先輩でもあるSO立川理道主将に代わり、グラウンドへ。
17-50と大きくリードを許していた展開で、立川より8学年下の26歳が反撃の司令塔役を託された。
「緊張するかなと思ったのですが、開き直って楽しもうと思えたら結構リラックスできました。ごちゃごちゃ考えず、自分にできることだけをやろうと」
SHで先発していた藤原忍とは、「もう一度ジャパンのシェイプをしっかりやろう」と確認した。天理大で1年時から組んでいたハーフ団の再結成だった。
「すごく幸せな時間でした。『シノブと一緒にハーフ団を組めているな』と。懐かしかったですね」
限られた時間の中でも、そのプレーぶりは初キャップとは思えない落ち着きを見せた。
入ってから最初のアタック機会でFB矢崎由高を走らせてチャンスを作れば、その後もプレッシャーを受けながら、ゲインラインを突破したり、飛ばしパスを織り交ぜながらスペースにボールを動かした。
「頭の中はクリアでしたし、冷静さは保てたと思います。ただ、自分たちのプランをやろうとしても、相手のディフェンスが堅かった。プレッシャーがある時のひと工夫がまだまだ足りていない。次の課題です」
「今日は自分にできる精一杯だった」と正直だった。テストマッチで国代表のSOを担うプレッシャーを、身をもって体感したという。
「東芝の10番に責任がないということではなく(笑)、日の丸を背負うということ、たくさんの人が目標にするジャパンの10番であるということ。責任はすごく感じました」
所属する東芝ブレイブルーパス東京では主にFBを任されることがほとんどだが、ジャパンではSOとFBを兼任する。
10番のポジションでプレーしたのは、昨季の第13節(4月14日)、リッチー・モウンガを欠いたコベルコ神戸スティーラーズ戦以来だ。
「10と15の両方ができるのは自分の武器です。東芝でも次のシーズンに向けては練習でずっと10番に入っていましたし、そこのギャップはありませんでした。どちらかというとリーグワンの決勝から試合をしてなかったので、その心配はありましたが大丈夫でしたね」
試合前日のジャージープレゼンテーションではチームがサプライズを用意していた。コベルコ神戸スティーラーズでプレーする年子の弟、貫汰がビデオメッセージを寄せたのだ。
昨季のレギュラーシーズンに全試合フル出場を果たした貫汰もまた、日本代表入りを目指している。春に一度、合宿にも呼ばれていた。
「弟もジャパンになりたいと思っている中で、こうしたことをするのは決して簡単なことではなかったと思います。複雑な気持ちがありながら、それでも称えてくれました。今日の試合も見に来てくれています。すごく感謝しています」
日本代表とはいろんな人の思いを背負う。それをあらためて実感し、「このジャージーを着られることは本当に幸せなことだと感じました」。
「着続けるためには成長し続けるしかない。チームにもっとコミットして、ポジション柄、もっとチームを引っ張れるようになりたいです」
世代別代表には縁がなかった学生時代を乗り越え一気に日本代表へ。10月30日には、大学3年時に関西学生代表でニュージーランドに行って以来という海外遠征で、フランスへと旅立った。
ジャパン定着へのアピールは続く。