関東大学対抗戦は上位5校が全国大学選手権に進める。
今季も帝京大、明大、早大が下位勢との力の差を見せつける中、この選手権出場をかけた争いがかつてないほどの熾烈だ。
開幕戦で筑波大は慶大に快勝するも、第2節では立教大が23-29と追い詰め、第3節は青山学院大が30-22で破った。
前半戦を終えた順位は、上位勢との戦いを残す筑波大が勝ち点17で4位、ここから下位勢と対戦する青山学院大が勝ち点8で5位、全敗の立教大が勝ち点5で6位、7位の日体大が同4、勤労感謝の日に早慶戦を控えるためまだ3試合しかおこなっていない慶大が勝ち点3で8位となっている。
*今季から勝ち点は勝利5、敗北1、引き分け3、ボーナスポイント1でカウント
勝ち点と今後の対戦カードを考えれば、青山学院大が一歩リードしているようにも映るが、昨季6位で惜しくも選手権出場を逃した立教大も負けていない。
ここまで勝ち星には恵まれていないが、第4節の明大戦では渾身のファイトを見せた。
前半26分までリードを保つ。そこで光を放ったのが、ルーキーのWTB村上有志(むらかみ・ありし)だった。
8分に挙げたトライは、スクラムを起点にしたアタックから村上が左タッチライン際を走り抜けた。
華々しい活躍を見せる同級生のWTB白井瑛人をトイメンに置き、得意の外勝負に持ち込んでステップ一発、抜き去った。
2人は昨季の花園決勝(桐蔭学園8-5東福岡)でも対峙していた。ともにCTBで先発。その時は桐蔭学園の白井に軍配が上がった。
「もちろんリスペクトしています。その上で、意識している相手でもあります」
このシーンに限らず、今秋は上位勢を相手にどの試合でも、必ずと言っていいほど好走を見せてきた。
間違いなく後半戦で勝利の鍵を握るキーマンのひとりだ。
「思ったよりも通用していると感じています。ただ、まだまだフィジカルを上げていかないとこれからの3戦も勝てない。短い時間ですけど、もう一度鍛えたいです」
岐阜県出身。小学1年時に関ラグビースクールで競技を始めた。
高校で地元から遠く離れた東福岡に通ったきっかけは、中学3年時に加入した「藤田塾」だ。
東福岡のOBである藤田慶和(三重H)の父・久和さんが塾長を務めるラグビースクールに週に1回、片道1時間半かけて名古屋まで通った。
「そこで東福岡の夏合宿にクリニックのような形で参加させていただいて、そこで声をかけてもらいました」
県外の高校に進学してラグビーを続ける選手は少なかったが、1学年上には炭竈柚斗(法大2年)が兵庫の報徳学園に通っていた。東福岡への進学は県内初だったという。
レギュラーに定着したのは3年時だ。同期で高校日本代表のFB隅田誠太郎(同志社大)からパスを教わり、課題を克服していた。
171センチ、81キロと小柄な体躯ながら、コンタクト強度が大きく変わる大学でもすぐさま活躍できたのは、高校時代に励んだウエートが大きかった。
FB隅田、WTB西浦岳優(早大)に、後輩のCTB/WTB深田衣咲を入れた4人で、朝やオフの日、練習後など、時間を見つけてはウエート場に足を運んだ。
「俺らでヒガシを強くしようと。スクワットとベンチプレスは特に頑張って、BKでは一番でした」
立教大に入学してからまもなくWTBに回った。佐藤侃太朗、天羽究平といった有力なCTBが揃っていた。
「はじめはCTBをやりたかったのですが、徐々にWTBにも慣れていくうちに、WTBの楽しさも知りました。それまではアシストが好きだったのですが、トライを取り切るのもいいなと」
自身のパフォーマンスに手応えを掴みつつ、チーム全体の可能性も感じている。
「強い相手にも通用する部分がかなり多くありました。特にディフェンス。毎日必ず練習していますし、BKは上手くコミュニケーションを取りながら、前に出るタイミングや駆け引きが良くなっていると思います」
勝負の後半戦に向け、楽しみなカードもある。最終節の青山学院大戦だ。
同期のFL松﨑天晴、FB井上晴生をはじめ、高校時代に切磋琢磨したかつての仲間が多い。
「一緒に戦ったチームメイトが対戦相手として戦えることは嬉しいですし、緊張もします。負けたくないです」
同校初の選手権出場へ、新たなトライゲッターに名乗りを上げる。