ラグビーリパブリック

日本代表マロ・ツイタマ、母国オールブラックスを倒すチャンス掴んだ。

2024.10.25

PNC決勝・フィジー戦に先発出場したマロ・ツイタマ(撮影:早浪章弘)

 両腕にタトゥがある。

 右は鯉と龍。いまプレーする日本にちなんだものだ。

「鯉も、龍も、上を向いています」

 左には文様がある。ルーツ国のサモアにまつわる。

「この模様が自分の出身地を表しているのです」

 10月26日、神奈川・日産スタジアム。サモアの血を引くニュージーランド人のマロ・ツイタマは、日本代表の11番をつける。母国の代表チームにぶつかるためだ。

 オールブラックスの異名をとるナショナルチームは、少年時代には憧れの対象だった。両軍の出場メンバーが決まる前の18日、28歳になったツイタマは胸を高鳴らせていた。

「このイベントはとても大きいもの。キャリアの中で最も大きな試合のひとつなるとも言われています。(出場可否は)コーチの判断次第ですが、もしプレーする機会があれば楽しみたいです。ニュージーランドに住むラグビー選手の子どもは、いつかあの黒いジャージィを着たいと考えます。いま、自分は赤白ジャージィを着て、ニュージーランド代表と対戦できるかもしれない。…もし実現すれば、自分の夢が叶ったとも言えます」

 ヤマハ発動機ジュビロに入ったのは2019年のことだ。ニュージーランドで出会ったパートナーとともに、拠点の静岡で新生活を始めた。

 言葉がわからず買い物にも苦労したが、フィールドでは持ち味を発揮。身長182センチ、体重91キロのサイズで速さと決定力を示した。

 所属先が静岡ブルーレヴズと名を変えて3シーズン目の昨季は、国内リーグワンで最多トライゲッターになった。旧トップリーグ時代に続き2度目の栄誉だ。

 代表資格を掴んで赤と白のジャージィを着たのは、現地バンクーバー時間で8月25日パシフィック・ネーションズカップ(PNC)のカナダ代表戦でのことだ。PNCでは準優勝するまで全4試合に先発。向こうのゴールラインは3度も割った。

 その間、ゆかりのあるサモア代表を49-27で下した。鋭い走りとキックで魅した。試合前に相手が披露したシヴァタウという踊りについて、こう述懐した。

「あれは戦争に行く時の儀式。見る側としても燃え上がるものがあった」

 今度の大一番では、看板のランニングのほかキック処理にもこだわる。

 混とん状態から首尾よく空間をえぐるオールブラックスに対し、整備されたシステムのもとハードワークしたい。スペースに蹴り落されるのを防ぐべく、頭を使ってタフに動く。

「スペースがあれば間違いなくそこを取りに来る。それに対し、自分たちはいかに速く(穴場を)カバーするかが大事です」

 自分たちが蹴り返す際は、落下地点の周りに網を張る。「相手にランの選択肢を与えさせたい」。袋小路に追い込み、ボールを奪い取る。

「自分のベストを尽くしたい」

 当日、オールブラックスの13番をまとうビリー・プロクターは、ツイタマの攻撃力を警戒。「細かく見ないといけない」と話す。自国のウェリントンで一緒にプレーしたことがあるという。

「遠征でルームメイトだったこともあるんです」

 旧友を交えたバトル。ツイタマは、万事において先手を取るつもりだ。

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