規格外のパワーの持ち主が、ラグビー日本代表となる資格を掴んだ。
まもなく待望のスコッド入り。10月13日から関東合宿、宮崎合宿へ参加し、26日のニュージーランド代表戦(神奈川・日産スタジアム)に出られるよう努める。
もし出場できれば、ワールドカップ3度優勝の強豪国を代表デビュー戦の相手にできる。
身長190センチの突進役、オペティ・ヘルは気を引き締める。
「自分の仕事をしっかり遂行したい。スタンダードの高い仲間に学びを得ながら、彼らに追いつきたいです。世界のベストチームと戦うにあたり、緊張しています。同時に、この緊張をなくすためにハードトレーニングをしています。自信が緊張を上回るようにするためです」
トンガ出身の26歳。留学していたオーストラリアで高校代表となるなど若くして注目されながら、一時は宣教師としてガーナで活動した。
この国のクボタスピアーズ船橋・東京ベイに加入したのは2019年。所属選手のトゥパ フィナウが親戚だったのがきっかけだ。
一時は怪我に泣いたが、現行の国内リーグワンが2021年に発足後は3季連続でベストフィフティーンに選ばれた。スクラム最前列の右PRにあって、圧倒的な突進力、ぶつかった勢いで球を奪い取る強烈なタックルで相手を驚かせた。
「日本に生活するなかで、日本に恩返しをしたい、日本でプレーしたいという気持ちが徐々に強くなりました」
日本代表を率いるエディー・ジョーンズとは、選出が発表される今年10月10日よりも約2週間前に顔を合わせたようだ。その時点では「招集されるかわからなかった」らしく、地に足をつけて千葉県内の本拠地で汗を流してきた。その延長線上にいまがある。
かねてジョーンズに「(ヘルは)これからどれほどハードワークする心構えがあるのかが問われます」と期待されたヘル。覚悟を固める。
「とても大変な環境にいます。このハイレベルな場所でパフォーマンスを発揮し続けることは、決して簡単ではない。それに適応することも、私のチャレンジのひとつになっています。意欲を高く持っています」
体重は公式で「127キロ」も、実際には「129キロ」。これも、最近になって「4キロ」もシェイプした結果だ。もともと「133キロ」だった身体を引き締めたのは、卵、鶏、魚、プロテイン、野菜が中心の食生活と、タフなトレーニングとの合わせ技による。
「自分の身体への理解度が高まっています。ハイレベルでハイパフォーマンスを発揮するには食事とリカバリーにこだわる。S&Cのスタッフにプログラムをもらって取り組んでいます」
ジョーンズは『超速ラグビー』を唱える。まとまって素早く動くのを目指す。ヘルは「『超速』に合う身体になってきています」と頷く。
「ジャパンでは、マインドセットを含めて『超速』に切り替えないといけない。動き、考え方を含めてです。現在、エディーをはじめとした指導陣に自分の仕事を細部まで詰めてもらい、コーチングを受けています。タックルの後にすぐに立ち上がってディフェンスラインに入るスピード、ボールを持っていない時にボールを持った仲間をサポートするための走行距離…」
ニュージーランド代表戦に臨む日本代表の23名は、24日にアナウンスされる。