この秋、ラグビー日本代表に姫野和樹が帰ってきた。
主将として臨んだワールドカップフランス大会以来のカムバックだ。10月13日からの活動へ参加。11月まで国内外で代表戦をおこなう。
「ラグビーができることが楽しい。(首脳陣には)速く考えて速く動くようにと言われている。自分たちにも合ったスタイルです」
身長187センチ、体重107キロの30歳。ニュージーランドのハイランダーズにいた2021年から痛めていたという肘の手術を経て、曲がらなかった患部がある程度は満足に伸ばせるまでにした。休養も取れた。
キャンプ地の宮崎で19日に取材に応じ、報道陣の前で腕を曲げ伸ばししてアピールした。
日本代表では約9年ぶりにエディー・ジョーンズヘッドコーチが復職。以前のジョーンズ体制下で、姫野は帝京大1年時に強化合宿へ呼ばれた。
久々に再会したボスは、目下、『超速ラグビー』というコンセプトを唱える。集団としての動きにスピードを求める。ボールを持たない選手へは運動量、パスコースへ走り込む意識を問う。
注目の復帰選手は、新たな戦い方に順応する。しようとする。
「慣れなきゃいけないです。いまは頭の中で『どこに行かなきゃいけないか、どこにアタックしなきゃいけないか』とか考えながらやっている。これを繰り返し、繰り返しやっていきながら、身体に慣れさせる作業が一番、重要です」
この日は雨天のもと実戦練習。グループがふたてにわかれる中、立川理道主将や6月から全試合に出場の原田衛らが赤いジャージィを着る傍ら、姫野は4名の初選出組と同じ白いジャージィをつけていた。
序列は、自ら変える。
今回のキャンペーン初戦は26日。神奈川・日産スタジアムで迎えるのは、オールブラックスことニュージーランド代表だ。
ワールドカップでは通算3度優勝。日本代表が2大会ぶりに予選敗退したフランス大会も、準優勝で終えている。キックオフの前に「ハカ」を踊ってムードを作ることでも知られる。
強大な敵に勝つにはどうすべきか。姫野は即答した。
「これに関しては、自信をしっかり持つことです。若い選手にも言いたいんですけど、自分たちの持っているタレントは素晴らしいし、自分たちは素晴らしいラグビーをしているんだから、その自信を持って戦うこと。向こうはハカをしてきますけど、そっちではなくて自分たちの自信にフォーカスする…」
第一次ジョーンズ政権は、‛15年のワールドカップイングランド大会で歴史的3勝を挙げた。体制が刷新されてからも、ジャパンは‛19年の日本大会で初の8強入り。その大会でワールドカップ初出場の姫野は続ける。
「‛15、‛19 年と積み上げてきて、日本は、弱い国じゃない。強い国。その自信を持って臨むメンタリティが大事」
37名中19名が今年代表デビュー、もしくはテストマッチ未経験者という若いスコッドにあって、この戦士は貴重なスピリチュアルリーダーとなりうる。
勇気を持たせるだけではなく、鋭い指摘もいとわない。
「(現状ではトレーニングで)エディーさんに『全然、だめ』『スタンダードが低い』と言われてやっている。ただ、選手自身で高いスタンダードを要求し合うことが、強いチームの特徴です。コーチに言われてやるのではなくて、自分たち自身を持ち上げながらやっていくのが重要なのかなと思います」
横浜では80分間プレーできるか。コンディションの観点でそう聞かれ、「行けます。アピールしています」とほほ笑んだ。