ラグビーリパブリック

ワクワクするからラグビーは楽しい。西浩斗[京産大/WTB]

2024.09.30

170センチ、75キロと小柄も、的確なポジショニングとタックルが売り。スピードも一級品(撮影:藤田芽生)


「ラグビーがひたすら楽しい」

 そう言って笑顔でグラウンドを駆けるのは、京産大4年の西浩斗。ディフェンスでも、ランニングでもチームの中核を担い、常に勝利に貢献してきたウィンガーだ。
 
 ラグビーを始めたきっかけは些細なものだった。中学入学後はバスケ部に所属するも、1年で退部。何も打ち込めるものがなくなった西を、友人が楕円球の世界に誘った。「ノリで」熊本ラグビースクールへの入団を決めた。

 それでも、いざグラウンドに足を運べば想像以上に楽しかった。一気にのめり込んでいった。
 3年からの入部だ。周りの仲間よりも当然、後れを取っていた。それをバスケで培ったハンドリングスキルと不断の努力で補う。めきめきと頭角を現し、熊本県選抜にまで選ばれるようになった。

 それから高校指導者たちの目に留まり、県内随一の強豪・熊本西に進学。個性派揃いでレベルの高い仲間たちに囲まれ、さらに実力を伸ばしていった。
 チームは1年時と3年時に花園に出場、3年時は初戦で早稲田実に0-41で敗れたが、西も背番号15をつけてグラウンドに立った。
 
 卒業後の進路は悩んだ。高校2年の12月に日本ラグビー協会が主催する「ビッグマン&ファストマンキャンプ」のメンバーに選出されたことで、複数の大学から誘われたのだ。
 そのひとつが京産大だった。決め手となったのは高校の先生の助言。「京産は真面目に練習すれば、本当に成長できる」と言われ、心は決まった。

 地元・熊本から遠く離れた京都に単身、しかも初めての寮生活だ。不安も大きかった。
 しかし、仲間の存在がその気持ちを消してくれた。生活をともにし、楽しい時間も、苦しい時間も分かち合えた。

「一人じゃないなって思えたんです。常に夜は誰かといて、おしゃべりしたり、ゲームしたり。それで練習の疲れは回復できます」

 寮生活にこそすぐ馴染めたが、入部当初は大学のレベルの高さを痛感する。
 1学年上にはコベルコ神戸スティーラーズに進んだ船曳涼太や、豊田自動織機シャトルズ愛知に所属する松岡大河など、同じポジションで2年生からAチームで活躍する先輩がいた。

「僕は熊本のレベルしか知らなかったので、関西の強豪にはすごい人がたくさんいて驚きました」

 彼らの背中を見て学び、西もそれに続く。2年時の夏の菅平合宿で猛アピール。秋の関西リーグ開幕戦で先発出場を果たし、トライも挙げた。
 その後も出場を続け、チームに欠かせない選手にまで上り詰めた。

 その年はクラブの歴史も作った。大学選手権で、慶大戦での初勝利に貢献。2年連続で準決勝に進み、1年前はスタンドから見詰めるだけだった国立競技場の芝の上を、自分の足で踏みしめた。

「緊張っていうよりも、楽しみの気持ちの方が大きかった。ワクワクする気持ちがすごくあったのを覚えています」

 どんな舞台でも「ワクワクする」気持ちを忘れたことはないという。これまでラグビーを続けてきた大きな理由にも、その「ワクワク」は外せない感情だった。

「練習はしんどい時もあるけど、試合でトライを取ったり、良いタックルを決められたり、仲間が活躍している姿を見られると、楽しいし、熱くなれます」

 この気持ちがあるからこそ、西はグラウンドで一際、輝くのだ。
 
 最終学年で迎える関西リーグは、9月22日に開幕した。
 西は足の甲の負傷で欠場しているが、目指すところはブレない。

「ちゃんと復帰してチームに貢献したい。選手権の決勝にいきたいです。ずっと準決勝で負けてきて、悔しい思いをしてきました。今年で歴史を変えたいです」
 
 時にはすれ違うこともあったけど、寄り添い合ってともに成長してきた4年生へは特別な思いがある。
「関西リーグ始まってから『みんなと勝ちたい』と強く思うようになりました」

 最後の1年、全員で笑顔で終われるように。仲間と壁をぶち破る。

Exit mobile version