ラグビーリパブリック

美しいトライと渋い防御。日本代表ディラン・ライリーは「課題を振り返り、修正します」

2024.09.24

9月21日のPNC決勝で仕掛けるディラン・ライリー(撮影:早浪章弘)

 反対する人は少ないだろう。

 8月下旬から約1カ月間あったラグビーのパシフィックネーションズカップで、もしも日本代表が優勝していたら誰が大会MVPになっていたか。

 きっとディラン・ライリーではないか。

 身長187センチ、体重102キロの27歳は、本職のアウトサイドセンターで全4試合に先発。走力、人垣を破る技術、堅守で光った。

 所属する埼玉パナソニックワイルドナイツの本拠地で躍動したのは、9月7日。熊谷ラグビー場での予選プール2戦目で、後半5分に約80メートルを独走。ゴールラインを割った。コンバージョン成功を受け、31-10と流れを傾けた。

 結局、対するアメリカ代表を41-24で撃破。今年約9年ぶりに日本代表のヘッドコーチとなったエディー・ジョーンズは、自身の出生国であるオーストラリアで育ったエース格をこう称えた。

「とてもいい形でゲームに貢献してくれています。(今後は)試合で活躍する場面を増やしていくことが大切。私は、ライリーが世界で一番の 13 番(アウトサイドCTB)になるという自信があります」

 殊勲の騎士は、15日の準決勝でも動き回った。味方のキックをキャッチしてからの先制トライ…。相手が自陣の深い位置へ蹴った弾道を、トップスピードで追っての捕球…。東京・秩父宮ラグビー場でサモア代表を49-27で破った。

 14-47と敗れたフィジー代表との決勝でも、爪痕を残した。東大阪市花園ラグビー場のファンを沸かせたのは、前半20分のことだ。

 ハーフ線付近左中間でパスダミーを交え、細かい足の動きでラインブレイクを決める。ギアを入れる。行く手を阻むカバー役をいなすべく。球を右足でふわりと浮かせる。それを自ら手にし、インゴールエリアまで駆け抜ける。

 直後のゴール成功もあって一時7点リードを奪うこのスリリングなスコアの他にも、印象的なプレーを重ねた。

 さかのぼって試合開始早々には、巧みな防御のコース取りを披露した。

 自陣22メートル線付近右で数的不利を強いられながら、接点側から右斜め前方へ駆け出す。パスの受け手との間合いを死角から詰める。刺さる。繋ぎのミスを誘う。

 続く14分にも守りで魅了した。

 中盤右で、仲間と一枚岩を作ってせり上がる。目の前のボール保持者がプレー選択に迷っていると見てか、単騎で加速する。仕留める。倒す。すぐに起き上がり、接点に身体を差し込む。攻守逆転。

「速い試合展開のなか、判断力が求められています。そんな中、今週のテーマに『前に出続ける』というのもがありました。フィジー代表は、1対1を作り、フットワーク、強い上半身を活かしてプレーしてきます。そこへ速くプレッシャーをかけて止めたかったので、(ディフェンスで)前に飛び出すことが多かったです」

 この夜の守備への意識をこう語りながら、終盤に失速した展開を「自陣でプレーする機会が増えて点数を与えてしまった」。もっとも、視界は明るいと強調する。

「このキャンペーンでは連戦を通して色んなことを試せたのがよかった。最後だけは結果が伴いませんでしたが、いったん身体を整えてからさらにハードワークする。きょうの試合(決勝)で出た課題を振り返り、修正します。改めてチームでコネクトし、頑張る必要がある」

 大幅に若返ったスコッドにあって、貴重なワールドカップ経験者のひとり。7月までのサマーキャンペーン時から、5試合連続トライ中だ。

「トライは自分ひとりで獲ったものではい。トライはチームの力。自分はたまたまその(フィニッシュの)役目でチームに貢献できただけです」

 10月26日のニュージーランド代表戦でも、世界を驚かせたい。

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