並々ならぬ覚悟で15人制への転向を決めた。
昨年7月のスペイン戦で女子日本代表デビューを果たしたCTBの弘津悠(はるか)は、その少し前までセブンズを主戦場としていた。
2021年にはサクラセブンズの一員として東京五輪に出場。不甲斐ない結果に終わったことで、パリ五輪でのリベンジを誓っていた。
転機は2022年9月にあった。W杯セブンズ南アフリカ大会のメンバーから漏れたのだ。
「オリンピックで結果を残したい、もっと頑張らないと、と思っていた矢先の落選でした。そこで一歩引いて考える時間があって。7人制は好きでしたが、得意ではないと感じることがもともとありました。自信のあるハンドリングスキルやコンタクトの強さは、もしかしたら15人制の方が向いているのではないかと」
それまで15人制の試合をフルタイムで経験したことがなかった。コベルコカップには近畿代表で参加するも、開始数分で負傷退場していた。昨年の1月に「九州・ながと合同」の一員として全国女子選手権大会に出場すると、すぐさまサクラフィフティーンからお声がかかった。
「パリオリンピックを目指す途中で挫折し、15人制に切り替えたという背景があったので、自分の中では大きな覚悟を持って15人制を始めました。セブンズのみんなが頑張っているのも知っていましたし、15人制に転向したからには必ず結果を出したいと思っていました」
初キャップ獲得以降はほとんどの試合で先発出場を掴み、アピールを続けている。やはり15人制でその強みはより活きた。
高いハンドリングスキルは、高校まで兼部していたバスケットボールの経験で培われたもの。一方のコンタクト力は、家族の影響が大きい。元日本代表の父・英司さん、筑波大OBの兄・陽介さんは、今でも頼めばコンタクト練の相手役を務めてくれるという。
「コンタクトの怖さがないのは2人のおかげかもしれません。男とぶつかると首回りが強くなった気がして、安心してラグビーできる」
それにしても、なぜここまで早く15人制に適応できたのか。その秘訣を「聞きまくること」だと答える。
「たくさん試合を見て疑問に思ったことはすぐに聞く。その繰り返しです。同じポジションの古田真菜さんはラグビーの知識がすごいのでよく聞きますし、 コーチではニックさん(イーリ ニコラス)に。ナナイロでは久木元(孝正スキルコーチ)さんにBKの考え方を教えてもらっています」
今季は海外のチームへの挑戦を希望したが、それは叶わず。ただ、所属するナナイロプリズム福岡は今年から15人制の強化も本格化させていくから、成長の速度を落とさずに済みそうだ。
目指すCTB像には「ゲインできる選手」を挙げた。「周りを活かしつつ、自分でも勝負できる選手になりたいです」。そのための増量もおこなっている。
来年のW杯には必ず出たい。
「15人制の経験はすごく浅いですが、東京オリンピックを経験させてもらった身として、大舞台で結果を出したいです。女子ラグビーが盛んなイングランド開催で盛り上がると思うので、そこで日本人でもできるというのを証明したい。そのためには、この1年がすごく重要になる」
不退転の覚悟で突き進む。
(文/明石尚之)
※ラグビーマガジン10月号(8月23日発売)の「女子ラグビー情報」を再編集し掲載。掲載情報は8月18日時点。
【女子日本代表「第2回 WXV2」試合日程】
・9月27日16:00KO vs 南アフリカ(南アフリカ/DHLスタジアム)
・10月5日14:00KO vs スコットランド(南アフリカ/アスローン・スポーツスタジアム)
・10月11日16:00KO vs ウエールズ(南アフリカ/アスローン・スポーツスタジアム)
※現地時間