ラグビーリパブリック

新星ジャパンの元気印。竹内柊平は「スクラムからも、『超速』を生む」。

2024.08.25

オンライン会見に出席した竹内柊平(©︎JRFU)

 画面にお辞儀し、「ご質問、ありがとうございます!」。この繰り返しだ。

カナダ遠征中のラグビー日本代表にあって、現地時間8月21日にオンラインで会見したのは竹内柊平。律儀で元気だ。

 同25日、現地のカナダ代表とパシフィックネーションズカップ(PNC)の初戦をおこなう。同23日のメンバー発表で、右PRのリザーブに入るのが決まった。試合中盤以降にエナジーを注入したい。件の取材機会で言う。

「PNCという大会は優勝がマストだと思っています。まずはカナダ代表戦。国外の試合で、負けてみすみす日本に帰るわけには絶対にいかない」

 今年、エディー・ジョーンズヘッドコーチが約9年ぶりに復帰していた。新体制のナショナルチームにあって、竹内は候補合宿を経て6月のサマーキャンペーンでスコッド入り。1勝4敗の戦績で終えると、8月10日以降の再招集まで休むことはほぼなかった。所属する浦安D-Rocksのトレーニングに合流した。

「自分は調整するとか、そういうランクに入っていない。ハングリーに鍛える」

 昨年は代表に絡みながら、秋のワールドカップフランス大会には参加できなかった。だから、世界で戦えるいまの状況にただ感謝している。

「体力的にはずっときつい感じなんですけど、毎日チャレンジするこの機会は、去年の僕が喉から手が出るほど欲しかったものです。当たり前じゃないし、楽しい。現実的にはリカバリーして、疲れて、リカバリーして、疲れて…となっていますが、全然、へっちゃらです!」 

 身長183センチ、体重115キロの26歳。競技を始めた宮崎ラグビースクールでは小柄で目立たなかった。進学した宮崎工高では、20センチほどサイズアップもトップレベルには挑めなかった。

 九州共立大の4年生だった2019年、当時あったトップリーグの合同トライアウトに勝負をかけた。もともとLOやNO8ながら、未経験だった右PRでエントリーした。そのほうがチャンスを得られると踏んだ。

 そのポジションで組んだことのないスクラムを、見よう見まねで組もうとした。すると、D-Rocksの前身たるNTTコミュニケーションズシャイニングアークスから派遣されていた斉藤展士コーチ(現三重ホンダヒート)に興味を持たれた。競技続行への道が開けた。ナショナルチームに近づけたのは、そのためだ。

 繰り返せば、フランスでのワールドカップに出られなかった。その2023年は、「過去イチの挫折」をした1年だった。

 国内リーグワンで2部スタートとなったD-Rockでは、1部との入れ替え戦で花園近鉄ライナーズに敗退。最前列で組むスクラムで、向こうの押し込みに苦しんだ。

 さらにフランス行きを逃すと、地元の宮崎でのパブリックビューイングで「元日本代表」と紹介された。久々に会った恩師に「まだ次がある」と慰められても、かえって悔しさが募った。

 同じ思いはしたくない。

 ラン、タックルといったフィールドプレーが大好きだが、「強みは、あえて、スクラムと言いたいです」。成功と失敗を繰り返すたびにレビューを重ね、世界のスクラム、自身とは無関係なまずの大学生のスクラムまで映像でチェックした。知見を深めた。

「ずっと弱いと言われていたスクラムで勝負して、日本代表の3番(先発右PR)を背負えるようにチャレンジしていきたいです」

 いまのジャパンでは、スクラムリーダーも託される。

「僕もまだ中堅か若手のほうでもありますが、役割を与えくれる環境です。一方、ベテランもサポートしてくれる。いい雰囲気で練習が行えております」

 サマーキャンペーンではジョージア代表、イタリア代表にプッシュされたが、その経験も肥やしにする。

 アシスタントコーチのオーウェン・フランクスの指示のもと、ひとりで無理にぶちかますのではなく「7割(の力)で、相手の後頭部を抑えるようにして、8人でまとまって組む」。様々な角度から差し込んでくる猛者へ、味方と繋がりながら対抗する。

 改めて、ひとりで押さない。

「スクラムの中でのマインドセット、マインドコントロール(が課題)だと思っています」

 集団としてのスピードを引き上げるべく指揮官が打ち出した『超速ラグビー』というコンセプトも、スクラメイジャーの視線で捉える。

「スクラムからも、『超速』を生む。押して(相手が崩れて)ペナルティーを取るのも『超速』に繋がる。(サマーキャンペーンで唯一の白星となった)マオリ・オールブラックス戦で自分が(スクラムをプッシュして)『うぉー!』と喜んでいたところも、つまり自分たちの士気を上げることも『超速』に繋がる。エディーさんもそう言っています。要所、要所のスクラムで勝つのが『超速』の一歩目です。そのリーダーを任せてもらっているのは誇らしいです」

 選手が入れ替わり、専門コーチも大きく入れ替わったジョーンズ体制下にあって奮闘する。

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