ラグビー日本代表の為房慶次朗は、簡潔に語った。
「勝つ、ですね。テーマは」
自身初参加となった今年6月からの活動では、キャンペーンを通して1勝4敗。特にテストマッチと呼ばれる国同士の代表戦では、1度も勝てなかった。
自身もテストマッチではスターターになれなかった。途中出場からのプレータイムも、決して長くはなかった。
6月22日のイングランド代表戦こそ後半7分から登場したが(東京・国立競技場/●17-52)、7月13日のジョージア代表戦(宮城・ユアテックスタジアム仙台/●23-25)、21日のイタリア代表戦(北海道・札幌ドーム/●14-42)はそれぞれ後半35、29分になってようやくフィールドに出られた。
約2か月間、おもに「TK」こと竹内柊平と右PRの座を争ってきた。心機一転。8月25日(日本時間26日)から参戦のパシフィックネーションズカップへ、こう意気込む。
「テストマッチは1勝もできなかった。だから、勝ちにいく。試合のスタート(先発)にもあまり入れなかったので、メンバー争いにも勝つ」
チーム内競争を制する鍵は。そう問われれば、自身の伸びしろを前向きに語る。
「自分を練習でプッシュすること。あとは、プレーの精度がTKさんに負けている。まだまだ、いける」
ちなみにここでの「練習でプッシュ」とは、きつい状況でも動くのをやめない態度のことを指す。
8月11日、宮崎合宿での練習を終えるとコーチングコーディネーターのニール・ハットリーに呼び止められた。通訳を交え、グラウンドにしゃがみこんで即席の面談に臨んだ。
議題は「どう自分をプッシュするか」だった。本人は反省した。
「ちょっと、きょうの練習で、あまり自分のことをプッシュできなくて。もっと走るべきところで走れていなかった。やっている最中は必死やったのでそうは思っていなかったのですが、振り返ってみたら…。改善しなくてはいけないです」
挑戦の日々を過ごす。
身長180センチ、体重108キロの23歳。明大からクボタスピアーズ船橋・東京ベイへ入ったのは今年度からだ。ただし昨年12月からの国内リーグワンでは、大学卒業を待たずにプレーできた。アーリーエントリーという早期デビューのできる制度によってだ。
この国のトップレベルの舞台でも、さらにはナショナルチームでも、持ち前のフィジカリティには手ごたえを掴んだ。スキルの質と戦う姿勢を見直し、もっと活躍したい。
「レベルが高いところでプレーできることは刺激になりますし、僕自身ももっと皆に追いつけるようになりたいなと思います。代表レベルの運動量をつけたいです」
わずかながらも体感した欧州勢とのスクラムについては、「日本のスクラムと全然、違う。そこは戸惑いました」。さらに続ける。
「日本のスクラムって、姿勢や低さを大事にする。でも、ジョージア代表やイタリア代表はそこをあまり気にせず、パワーで押し切るみたいな感じ。(前回は)そこに慣れていなかったのですが、(今後は)対策していかないといけない」
組み合う瞬間に向こうのフォームが崩れていても、その状態から圧力を食らうリスクがあるとわかった。たとえ優勢だと確信しても、気を張っておくべきだ思えた。
向上のヒントを掴んだ。
「僕たちがやることは、変わらない。低さ、姿勢を(重視する)」
9月まで開かれるパシフィックネーションズカップでは対戦国に、仲間内のライバルに、対面の左PRに「勝」ちたい。