若いチームのリーダーに経験者を立てた。
ラグビー日本代表では約9年ぶりに指揮官となったエディー・ジョーンズは、8、9月に挑むパシフィックネーションズカップ(PNC)へ向け立川理道を主将に選んだ。
今回の大会プールフェーズ登録メンバー28名は、平均年齢が「26.6」と昨秋のワールドカップフランス大会参加者より約2歳、下回る。何より代表戦出場を意味するキャップ数は、2桁に達した選手が全体の約3分の1にあたる9名のみだ。
フレッシュな隊列の船頭役となった立川は、通算56キャップを持つ34歳である。
以前ジョーンズが率いていたナショナルチームの常連組の1人で、2015年のワールドカップイングランド大会では南アフリカ代表などから3勝を挙げた。ジェイミー・ジョセフ前ヘッドコーチのもとでは’16年の秋から約1年間、共同主将の一角を担った。
今年6月からの現体制下初のキャンペーンへも追加招集された。’22年以来の代表復帰だ。渋く光ったのは7月13日。宮城・ユアテックスタジアム仙台でのジョージア代表戦だ。
給水係を務めた。コーチ席から無線で飛ぶ指示を、グラウンドレベルの選手へ伝えるのが仕事だ。声をかけるタイミングを見計らったり、伝達内容の精査を精査したりするうえで深い想像力が求められた。この夜は、本来担当するはずだったコーチがキャンプ地に残ったことで立川がその役目を担った。
すると、主将だった35歳のリーチマイケルは「ハルさんを通してエディーさんのメッセージを聞くと(首尾よく全体に伝わる)」。23-25と惜敗する中、「ハルさん」に感謝しきりだった。
今年のジョーンズは早大2年の矢崎理高を抜擢したり、今年初代表の原田衛をリーダー陣に加えたりする中、主将にはリーチ、立川といった熟練者を擁立している。その間、期待する若手の中から「リーダーシップの素質を備えた選手がいるかを見ていきたい」と展望する。
組織が進歩するプロセスで重責を担った立川は、何を思うか。
「エディーさんのやりたいこと、伝えたいことは皆よりは汲み取れるのかなと思うので、(状況を)うまく見ていきながら選手に(首脳陣の意図をかみ砕いて)話していけたら。ただ、これはコーチ陣からも言われましたが、サポートの役割をするだけなく、自分をプッシュして競争に勝っていくところも見せていかないと。自分にも厳しく取り組んでいけたら」
話をしたのは8月11日。主将就任の発表に先んじて、あくまでシニアプレーヤーとしての立場について述べた。後輩の手助けをするだけではなく、SO兼CTBのひとりの選手としても爪痕を残したいと意気込んでいた。
ちょうど宮崎合宿の最中とあり、本番に向けたトレーニングの意図についても語った。
「サマーシリーズで出た課題をしっかりと修正すること。また、『超速ラグビー』というコンセプトがある中、(目指すスタイルを貫くのに)何が大事になるのかをより深堀りすること。そして、PNC(への準備)ですね」
一緒にプレーする年下の有望株には「ポテンシャルがありますし、マインドセットもいい」と刺激を受けてもいる。互いのエナジーを共有し、高め合いたい。