自分のパスがうまいとは思わない。
宮尾昌典はそう話す。
今季の早大ラグビー部副将で、京都成章高3年時に高校日本代表となったSHだ。身長165センチ、体重67キロの22歳は、防御の裏へ放つキック、果敢なタックルのほか、味方走者の手前へと伸びるパスに定評がある。
それでも、「うまいと思って投げてるわけじゃないです」と自己分析する。注視されがちなボールの回転数にも、さほどこだわりがない。
8月2日、都内の本拠地での練習を終えるやグラウンドに居残り投げ込んだ。「下手すぎて」とのことだ。
今夏、日本代表に呼ばれ目下本格合流前という2年生FBの矢崎由高、昨季の高校日本代表で1年生SOの服部亮太に付き合ってもらった。
もしパスが不得手だとしても滑らかにさばけるのは、競技の原則に沿って要諦を掴むからだ。繊細なテクニックよりも、実利の伴うスキルを磨く。
「いい場所に、速く(球を)放れたらいい。ゆっくり投げる時もありますよ。(立ち止まった)FWへは、5割くらいの力で『ひゅっ』と」
いまはクラブにとって5季ぶり17度目となる大学日本一を目指しながら、日本代表デビューへのロードマップも描く。
今年約9年ぶりに復帰のエディー・ジョーンズヘッドコーチは、同級生の主将でHOの佐藤健次、2学年下の矢崎ら計4名の大学生を日本代表および関連のJAPAN XVのスコッドに加えた。練習生、バックアップメンバー、2、5月の候補合宿参加者にはそれ以外にも学生がいた。
同世代が先に出世したように映る中、宮尾は自信を保っている。
ジョーンズ就任を前後しておこなわれた昨シーズンは、怪我などでプレータイムが限られていた。自身が注目されるのはこれからだと言いたげ。
勝負の季節を控え、春は個別調整に努めた。今年5、6月に参戦の関東大学春季大会Aグループでの出場を1試合だけにとどめ、膝を補強してきた。夏までにチームに合流した。
2027年のワールドカップオーストラリア大会へ、意欲を示す。
「いったん、ワールドカップに出てみたいです。僕、ビッグマッチが大好きで、わくわくする。そのためにラグビーをしている、みたいなところもある。で、ラグビーでビッグマッチと言えば、やっぱりワールドカップかなぁと」
目標達成のために、重要局面での仕事ぶりを磨きたい。
「僕がいま課題にしているのは、『プレーの大半は悪くなくても、最後のパス、最後のタックルが…』というところ。そこ(タフな場面)で確実にやれば、(代表でも)使われるかなと」
重要局面で基本技術を口笛の調子で披露したい。
かつ、「派手」な逸材になりたいとも誓う。
「めっちゃ仕掛けるし、やりたいようにするけど、チームにコミットする…。自分がチームの戦術と違う選択をした時、必ずプラス以上の結果をもたらす…。(理想像は)そういうところですね」
一貫性、正確性、本質的な強さを育む。