ラグビーリパブリック

早大で代表選手の成長見守った管理栄養士。中学生におにぎりを作ってもらうわけ。

2024.07.31

食事中の様子(Photo by Ken Shimizu)

 選手が主体的に大きく、強くなるのを手伝う。

「食べることと動くことは繋がっていると思っています。たくさん動いたらおなかが減るので、たくさん食べる。その時、自分の身体を作るのに必要な材料を摂れる人になって欲しいです」

 アスリート志望者への思いをこう語るのは金子香織さん。スポーツ現場での栄養指導に特化した公認スポーツ栄養士の資格を持ち、過去にはデフラグビー日本代表をサポートしてきた。早大ラグビー部にも携わったことがあり、当時在学していた現日本代表の齋藤直人らの成長を見守った。

「身体を動かすことと美味しく食べることに楽しみを見つけ、必要なものを自然に当たり前に摂れるように――」

 多分野で活躍中の現在、自らの心がけをある活動に反映させている。アルゴススポーツアカデミー。ラグビー選手の育成プロジェクトだ。小学校高学年、中学生といった育成年代を対象とする。

 スキルやフィジカルを強化するトレーニング、けがを防ぐためのリカバリーのほか、金子が何をどう食べるかを伝えるニュートリションの領域も充実させる。ニュートリションが、金子さんの担当領域だ。

 3月下旬の佐賀県内での第1回合宿では、トップ志向の10代前半の男女が約50名、参加した。

 それに先立って金子さんは、事前に宿泊施設や弁当の宅配業者とミーティング。何らかの形で主食、副菜、果物、乳製品を食堂に揃えられるよう調整した。

 肉や魚といったたんぱく源を各自で選べるようビュッフェ形式にし、毎回1品目以上は緑黄色野菜が混ざるようにも依頼した。

「(序盤に組んだ)栄養面のミーティングでは『自分に必要な量を知ろう』と伝え、毎回、ご飯を測ってもらうようにしました。(対象が)成長期の選手で、体重も様々。中には女子選手もいました。そのため(必要な食事量は)人によって違います。こちらがある程度、示した具体例(グラム数など)をもとに、それぞれその量を食べられるかを知ったり、食べるのが大変ならどうしたら食べられるのかを考えたり、自分がもっと食べられるかもしれないとわかったり…。(個々が)そうした経験を積み上げられたのがよかったです」

 キャンプ中は食後から身体を動かすまでに90分以上のブランクを設けたおかげで、参加者は口にしたものを消化して次のトレーニングに臨める。元早大監督の山下大悟氏の監修のもと、金子さんは、食事とパフォーマンスアップの関係性を体感させた。

「このキャンプで興味深かったのが、栄養というキーワードが全面に出ていたことです。常に栄養士が選手と過ごすチームがそれほど多くないなか、(アルゴスでは)選手たちと顔を合わせて、プログラム全体を通して食にアプローチできました」

 最終日に実施したのはおにぎり作りだ。

 金子さんは大学生に携わっていた際、一人暮らしを始めた途端に体調を崩す部員が多かったと実感。アルゴスで出会った若者には、保護者にサポートしてもらっているうちから自分の食事を用意し、健康を管理できるようになってもらえたらと考えた。

 何より、楽しんでエネルギーを蓄える体験を創出したかった。

 当日、それまでのキャンプで身体作りのイロハを学んだ面々が、適宜、必要な分量のお米を好きな味付けで握った。金子さんの述懐。

「大きいものをひとつ作る選手も、小さいものをいくつか作る選手もいました。ラグビーのプレーでもそうかもしれませんが、個性が出るんです」

 第2回合宿は8月19日からの3日間、福岡でおこなわれる。主催者はそれと並行し、登録選手制度を整備。金子さんら各分野のエキスパートによる定期的なアドバイスやコンテンツ発信などで、未来のトップランナーとその家族をバックアップする。

金子 香織さん
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