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結果が出なくても「まだポジティブな感じ」。日本代表・ワーナー・ディアンズの視点。

2024.07.26

ラインアウトでは指示役を担うワーナー・ディアンズ(撮影:早浪章弘)

 呼吸が合わなかった。

 ワーナー・ディアンズがそう認めたのは7月21日。北海道・札幌ドームでのイタリア代表戦を14-42で落とした直後だ。

 自身が周りへ指示を出す空中戦のラインアウトで、失敗を重ねていた。その背景を問われ、こう述べた。

「自分たちのプランしたものがうまくいっていないことが何回かあり、(それを試合中に)直す…という感じ」

 本人調べによると、80分間を通じて自軍ボールの回数は「28本」。かくも多くの機会があったのは「初めて」の経験だとし、エラーが起きた時の共通点を「多分、コミュニケーションミス」とした。

「(場合によっては)誰かがコールを聞いていなかった…とか」

 ラインアウトは共同作業だ。ボールを投げ入れる人、それをジャンプして捕る人、それを支える人が息を合わせて成功させる。

 この日の日本代表は、捕球役が最高到達点まで飛ぶより先に、その真上へ楕円球を通過させたこともあったか。

 どの位置の選手がどんなプロセスでキャッチするかを決めるディアンズは、約9年ぶりに復帰のエディー・ジョーンズヘッドコーチ曰く「ラインアウトのコールを学んでいる最中」。本人は、今後のトレーニングで互いの意思疎通を深めることで、成功率を高められると話す。

「もっと全員が(意図を)クリアにする。練習でプレッシャーをかけてやる。(改善策は)それしかないと思います」

 身長201センチ、体重117キロの22歳。14歳で来日し、2021年、大学を経ずに現リーグワン1部の東芝ブレイブルールーパス東京に加わった。まもなく代表デビューを果たした。昨秋はフランスでワールドカップに初出場した。

 今夏の日本代表は、指導陣とメンバーを大幅にリニューアル。それ以前からナショナルチームにいたディアンズは、1勝4敗で終えた今度のサマーキャンペーンで出色の働きを示した。

 5戦中3つあったテストマッチ(代表戦)のすべてに先発し、接点の近くで球をもらって人垣へ突っ込んだり、迫りくる走者を羽交い絞めにしたり。

 ジョーンズは「超速ラグビー」という題目を唱える。攻防の境界線へ果敢に仕掛けるよう促す。従来になかったコンセプトを咀嚼しながら今回の連戦へ挑んだ歩みを、ディアンズは前向きに捉える。

「うまくいったことも、改善しなきゃいけないこともたくさんある。まだポジティブな感じはします。やりたいラグビーのイメージは、頭の中で作った。あとはどれだけハードワークしてそれをするか」

 次なる実戦の場は、8月下旬からのパシフィック・ネーションズカップ(PNC)。ディアンズは、「全然、(PNCで)プレーしたいです」。当世風の言い回しで、8月上旬からの合宿へ帯同したいと述べる。

 これからは、喫緊の課題とされる得点力も高めたい。

「いいアタックをして、(あと一歩で)ミスすることがある。(敵陣)22(メートルエリア)に入ったら、もっとトライに繋がるプレーをしたい」

 折しもジョーンズは、敵陣ゴール前での攻めをよりクリエイティブにしたいと展望していた。ディアンズは続ける。

「まだ若いチーム。これから一緒にラグビーして、仲良くなったら、皆のコネクション(繋がり)もよくなるし、皆の経験(値)も成長する」

 連帯感を強めることで、パフォーマンスを高められると信じる。

 オフは母国で静養するという。

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