姿勢が崩れない。23歳の為房慶次朗が、今年6月に初めて入った日本代表で持ち味を発揮する。
6月22日は東京・国立競技場で、イングランド代表戦の後半7分から出場した。初キャップを得て、コンタクトシーンで存在感を示した。
その翌週、6月29日には東京・秩父宮ラグビー場でさらに爪痕を残した。
正代表を若手主体に組み替えたJAPAN XVの右PRとして、対マオリ・オールブラックス2連戦のファーストゲームに先発した。
スクラムで優勢だった。腰を落とし、首と背筋のラインを真っすぐに保った。予備動作の段階で相手の体勢を崩しにかかり、衝突とともに前に出た。時折、ペナルティーキックも獲得した。
前半34分頃の1本は「ちょっと、ヒットで乗られて(のしかかられて)、その拍子に…」との反則を取られたが、その時とて自身の姿勢は崩さずにいられた。
「スクラムでは結構、自分たちのやりたいことがやれた」
フィールドでも光った。海外選手とのぶつかり合いでは引けを取らなかった。眼光の鋭い身長180センチ、体重108キロの兵士は、68分間、堂々と戦った。
「フィジカルの部分は、通用する」
チームの課題を聞かれれば、「ゴール前に入ったところで(点を)獲り切るところ」だと応じる。敵陣ゴール前でモールを押し込みながら「ちょっと安心して、力を抜いて」してしまったことからスコアしきれなかったり、自らゲインライン上に勢いよく駆け込みながらも落球したりしたのを悔やむ。
JAPAN XVとマオリ・オールブラックスとの次のゲームは7月6日、愛知・豊田スタジアムである。新星は言う。
「(改善したいのは)ブレイクダウン(でのサポート)の精度。(日本代表とJAPAN XVは)テンポを上げたいので、ボールが(相手に)絡まれないようにしたい。あとは、走り込む時のボールのもらい方(も修正点)です。それと、ボールを持っていない時の働きのインテンシティ(強度)をもっと上げていきたい」
大阪の常翔学園高時代には、高校日本代表となった。背筋の強い右PRとしてその名を馳せた。明大でも学年を追うごとに存在感を示し、ライバルの帝京大で主将だったHOの江良颯にこう言わしめた。
「フィールド(上の動き)がよく、スクラムも強い。ヒットスピードが速いのと、その後のパワーがある。『(組み合う段階で)ここまで抑えていたら、行ける(自軍が優勢になる)だろう』と思ったところで、持っていかれる(圧を受ける)こともあった」
今年、2人は揃ってクボタスピアーズ船橋・東京ベイに入ってアーリーエントリーでリーグワンデビュー。力を示した。江良が肩を治療するいま、為房はナショナルチームへ身を投じている。
約9年ぶりに復帰したエディー・ジョーンズヘッドコーチのもと、宮崎、福岡での合宿で奮闘。切れ目のない実戦練習を通し、キックを蹴られた箇所へ駆け出す反応、速さに変化があったと語る。
「結構、ハードで。だいぶ、走るなぁって。明大の春シーズン(鍛錬期)みたいです」
今夏の代表関連ツアーでは、浦安D-Rocks所属で「JAPAN XV」に入っていない竹内柊平、29日の試合で途中出場した帝京大2年の森山飛翔とポジションを争っている。「まず、怪我をしないように」と意気込む。