6月29日、JAPAN XV対マオリ・オールブラックス戦を直前に控えた秩父宮ラグビー場にほど近いJAPAN OLYMPIC SQUAREで、元女子日本代表の横尾千里と玉井希絵が、次代を担う女子選手に向けたキャリアイベントに出席した。
これは株式会社パソナグループが主催したもの。同社は2005年より競技生活と仕事を両立させる「パソナスポーツメイト事業」を開始。2022年から全国で「アスリート社員」を募集。玉井もグローバルアスリート社員として所属している。
今回、同社と日本ラグビー協会が協力、「情熱をキャリアに! 未来のチャンスをつかもう」と女子ラグビーに取り組む高校生、大学生を対象にイベントを企画。参加枠を一般ファンにも広げ、当日は30名以上が参加した。
イベントはスポーツジャーナリスト田中大貴氏の進行で、2人がいま取り組んでいることや、ラグビーと仕事を両立させることへの思いなどを語った。
玉井は2022年の女子W杯に出場した後、「日本の女子ラグビーをもっと良くしたい」と渡英。現在はイングランドのイーリング・トレイルファインダーズでプロ選手としてプレー、シーズンを終えて帰国した。
もともとLOだった玉井は、渡英後、左プロップに転向。体重もサクラフィフティーン時代の82㌔から6㌔増やし、世界の女子リーグのトップであるプレミアリーグで戦った。当初は1年の予定も、監督に認められ契約が1年延長された。
来シーズンは、オックスフォードに住み、女子ラグビークラブのコーチをしながらプレーを続ける。指導するのはオックスフォード大の女子クラブではないが、オ大の女子部主将はチームの同僚でもある。
「私は向こうで“強さの秘密を盗みに来た”と公言してるんですが、さらにしっかりと学んで帰りたいと思っています」
15人制と7人制の代表で、2016年に開催されたリオ五輪に出場した横尾千里は、この4月に発足した早稲田大学ラグビー蹴球部女子部のヘッドコーチに就任。現在はANAに勤務しながら、週末はグラウンドに足を運ぶ日々だ。
女子部の部員は春の時点から少しずつ増え、現在14人。小学校からのプレー経験者もいれば、大学に入って初めて楕円球を手にした初心者もいる。
小3からラグビーを始め、常にトップのチームでプレーしてきた横尾。当初は大学生からタックルを教えることの難しさを感じたが、少しずつやろうとするようになり、今ではしっかり行けるように。「熱い子が多いんです」
女子部は7月13、14日に立正大で開催される大学女子セブンズにも出場する。大会の目標は選手たちで話し合って立てさせた。
「今は彼女たちの決めた目標に従って、どういうプロセスで進めていくか考えている状況です」
まだ産声をあげたばかり。練習着やグラウンドに設営するテントなどの備品もゼロからのスタートで、何を優先させるか頭を悩ませつつ、選手と一緒に成長中だ。
アスリートとして第一線で活躍し、現在進行形でキャリアを開拓中の二人の話は、参加した後輩やファンにとって示唆に富んだものとなった。