アップセットがなかった2024年度のスーパーラグビー・パシフィックの準々決勝。レギュラーシーズンの上位4チームが強さを見せて勝利した。今週末の6月14,15日におこなわれる準決勝は、いずれも目が離せない展開になりそうだ。
<準々決勝の4試合(6月7、8日)の結果>
◆チーフス43-21レッズ
キックオフからエンジン全開のチーフスがブレイクダウンで圧倒し、前半を31-0と大量リード。後半に3トライを返したレッズの反撃があったが、前半の貯金を使うことなくでチーフスが勝利した。
◆ハリケーンズ47-20レベルズ
今季で活動休止が決まったレベルズが前半奮闘を見せ6-14のスコアで食らいつくも、後半に自力の差を見せつけたハリケーンズがトライを重ねて試合を決めた。
◆ブルーズ36-5ドゥルア
セットピース(スクラム、ラインアウト)で圧倒するブルーズが終始試合を有利に進め、ドゥルアを1トライに抑えてで勝利した。
◆ブランビーズ32-16ハイランダーズ
白熱した前半は、スクラムでプレッシャーをかけたハイランダーズがリードする場面も見られたが、前半終了間際にブランビーズがトライを挙げ逆転で折り返した(17-16)。
後半は、バックスリーの活躍からトライを重ねたブランビーズが、ディフェンスでもハイランダーズを無得点に抑えて勝利した。
準決勝の2試合を展望してみたい。
◆ブルーズ×ブランビーズ
準決勝の第1試合は、ブルーズがホームのイーデンパーク(オークランド)にブランビーズを迎える(6月14日、KO現地時間/19時5分)。
4月20日のレギュラーシーズンでの対戦はイーデンパークでおこなわれ、ブルーズが46-7で圧勝した。しかし、その後のブランビーズは、しっかり修正している。同じ結果になるとは思えない。
過去5試合の対戦は、4勝1敗でブルーズ有利のデータも興味深いところだ。
ブルーズのメンバーをみると、先週から先発メンバーの変更は1人だけ。準々決勝で膝を負傷したキャプテンのLOパトリック・トゥイプロトゥの離脱は、ビックニュースとなった。しかし、このタイミングで脳震盪からサム・ダリーの復帰に救われた。それでも他のLOはベンチも含めて経験が浅い。ビックマッチだけに気になるところだ。若いLO陣のパフォーマンスに期待がかかる。
ブランビーズは、先発メンバーを先週から2人変更。PRジェームズ・スリッパーとFLローリー・スコットが先発メンバー入りをした。
先週ハイランダーズにスクラムでプレッシャーを受けて何度も反則を取られて前半は苦戦した。準決勝でブルーズに勝利するには、スクラムの安定感が必須になる。経験のあるスリッパーの復帰がブランビーズにいい風を吹かせる事ができるか。
ベンチを見るとFW6人、BK2人と、通常よりFWをひとり多くした。ブルーズの強力FW陣に対抗する意思を見せたセレクションか。
<注目マッチアップ>
■リーコ・イオアネ×レン・イキタウの13番対決
CTB対決と同じように、両WTBのマッチアップも当然見逃せない。それに伴い、両チームカウンターアタックが得意なだけにブルーズSOハリー・プラマー、ブランビーズSOノア・ロレシオのキッキングゲームも注目される。
ブルーズのゲームキャプテンとなるFLダルトン・パパリィイは、試合のカギをコリジョン(衝突)エリアと明言した。両軍共に決定力のあるWTB陣を活かすにはFWのバトルに掛かっている。
準々決勝のブランビーズの戦いから分かるのは、FW陣がしっかりと仕事をこなし、ボールを確保すれば一気にトライまで持っていく力があるということ。控え選手も充実しているブランビーズにも勝機は十分あると言える。
ブランビーズは、レギュラーシーズンの屈辱的な敗北と合わせて2年前の準決勝で敗戦(19-20)のリベンジに燃えている。
それとも、ブルーズが返り討ちにするか。激しい試合になる事は間違いないだろう。
◆ハリケーンズ×チーフス
準決勝の第2試合は、ハリケーンズがホームのスカイスタジアム(ウエリントン)にチーフスを迎える(6月15日、KO現地時間/16時35分)。
レギュラシーズンでの対戦は2度あった。4月13日にウエリントンで36-23とハリケーンズ勝利。5月24日にハミルトンでおこなわれた2回目の対戦も20-17でハリケーンズが勝っている。
しかしながら過去5試合の対戦はチーフスが3勝2敗と勝ち越している。
ハリケーンズのメンバーを見ると、前節からの先発メンバーの変更は4人。初のオールブラックス入りが濃厚となっているPRザヴィア・ヌミアは、準々決勝でふくらはぎを負傷して準決勝は欠場。代わりにポウリ・ラケテストーンズが背番号1を付ける。
シーズン途中のケガで離脱していたタイレル・ロマックスが復帰し、いきなり3番で先発。ロマックスの穴をしっかり埋めていたパシリオ・トシは、ベンチスタートで後半からのインパクトに期待される。
注目のFW第3列のセレクションは、今週は6番にキャプテンのブラッド・シールズが先週のベンチスタートから先発にまわった。ベンチを見ると、FW6人BK2人の布陣でFWの控えを1人多くしデヴァン・フランダース、デュプレッシー・キリフィの2人のFW第3列を入れてきた。
今季この布陣で勝利を重ねているだけに納得のいくセレクションだ。後半でもパフォーマンスが落ちないハリケーンズのFW第3列陣は不気味だ。
準々決勝直前で急遽欠場となったFBルーベン・ラヴは、準決勝に間に合い15番を付けて出場可能になった。チームにとって大きい。
チーフスのメンバーは、準々決勝とベンチも含めて変更なし。レッズ相手に素晴らしい出来だった。そのままの勢いを継続したいと思うのは自然な流れだろう。
<注目マッチアップ>
■アサホ・アウムア×サミソニ・タウケイアホのHO対決
今季絶好調でケガから復帰後も爆発力を見せつけているアウムアが、準々決勝で本来のパワーを見せつけたタウケイアホとのガチンコバトルに挑む。両者のラインアウトのスローイングは試合のカギに。
■TJ・ペレナラ×コーティス・ラティマの9番対決
代表復帰が濃厚のペレナラの経験値に対して、初の代表入りを目指すラティマの対決は目が離せない。
■ブレット・キャメロン×ダミアン・マッケンジーの10番対決
キャメロン(1キャップ)が代表復帰するには、この司令塔対決でアピールが必須。準々決勝でも抜群のゲームメイクをしたマッケンジーがキック、ラン、パスで相手を揺さぶる事が出来るか。接戦が予想されるだけに両者のゴールキックにも注目したい。
ピークをプレーオフに合わせてきた感のあるチーフス。準々決勝はブレイクダウンの圧倒で豪華なBK陣を活かすことができた。準決勝でもブレイクダウンでの攻防を一番意識しているだろう。ハリケーンズの充実したFW陣相手にどこまで対抗できるか。
ホームのハリケーンズは、2016年の優勝以来の決勝進出がかかっているとあり、ウエリントンのラグビーファンはもちろんの事、NZ全体で盛り上がっている。
チーフスとのNZダービーマッチに加え、両チームタレント揃いということでチケットの売れ行きは好調だ。久しぶりにフルハウスになるかもしれない。
ピッチでの白熱はもちろんスタジアムの熱気が加われば、さらに試合が盛り上がりそう。