コベルコ神戸スティーラーズのLO、小瀧尚弘は悩んでいた。
今季のリーグワンでは出場機会が限られた。わずか3試合の出場にとどまった。
6月13日に32歳を迎える。ベテランの域に入る。
思うように体が動かず、衰えを感じ、自信も失っていた。
「限界を感じていました」
そんな失意に沈むオフシーズンに、声はかかった。5月下旬におこなわれた「15人制男子トレーニングスコッド菅平合宿」に招集されたのだ。
「どこを評価していただいたのかはまだ聞いていません。でも、僕のことを知ってくださっているのが本当に嬉しかった。頑張ろうと思いました」
今回の招集を「本来であればあり得ないと思っていた」と話す。
「難しいメンタルの中でしたし、合宿はきついと聞いていたのでブルーな気持ちもありました」
しかし、勇気を持って菅平に足を運べば、「本当に来てよかった」と思える。晴れやかな表情を浮かべた。
「エディーさんがおっしゃるように、体の限界というのはないんだと。今からでも全然成長できるんだと実感した良い合宿でした。まだいけると確認できました」
エディー・ジョーンズHCとは、大学4年時に初めて招集された日本代表キャンプ以来の再会だ。飴と鞭を使い分ける指導スタイルは、10年前と変わっていなかった。
朝6時から始まるトレーニングも、当時と変わらずタフだった。最終日の紅白戦を終え、「もう吐きそうでした」と笑う。
「でも、体を追い込んでいく中で、成長を感じられた。コンディションも良くなっていったし、合宿前に想像していた以上に大きな収穫がありました。朝練はレスリングから始まり、当たって、走って、いろんなメニュー組み合わせていた。ラグビーの実践に一番近いトレーニングと感じました。神戸に帰ってからも取り入れていきたいです」
ワールドカップ2027オーストラリア大会への見方も変わった。「正直、諦めていたというか、考えることすらなかった。夢の話でした。でも、この合宿でまだいけると再確認できた。目標の一つになりました」
古巣の優勝に話題が及べば、「めちゃくちゃ嬉しかったです」と相好を崩す。
今後の決意を口にする。
「移籍しても大好きなチームであることに変わりないです。湯原さんのこともありましたし、涙が出ました。自分も神戸で頑張りたいです」