シーズンのクライマックスにスターターとして起用される。
信頼を得た何よりの証拠だろう。
5月18日(土)、横浜キヤノンイーグルスは埼玉パナソニックワイルドナイツとリーグワンの準決勝を戦う。
その試合で竹澤正祥はイーグルスの11番を背負う。
今季奪ったトライは3つだけも、全16試合のうち14試合に出場。第6節のコベルコ神戸スティーラーズ戦からは11試合連続、すべて先発の座をつかんだ。
強みを、より尖らせた結果だ。
昨季終了後のオフ、もともと注力しているウエートトレーニングに、さらに力を注いだ。
その結果、176センチと小柄な体は、さらに強靭な筋肉を装備した。
「動き出し、スピードが高まったと思います。そのお陰でプレーに余裕が出て、それがいい結果に結びついています」
沢木敬介監督に求められていた一貫性が出てきた。
スクワットは210キロが220キロにアップ。その数値はチーム内で、FWも合わせた中でトップクラスだ。
パワークリーンの数値も同様で、爆発力ある走りを支えている。
桐生ラグビースクール、シルクス (中学)時代から、足の速さには自信があった。
明和県央、日大の厳しい練習で強さを増した。日野レッドドルフィンズを経て、「プロとして勝負したい」とイーグルスに移籍した。
今季が3季目。年々成長を続けている。
オフの間に高めた肉体のレベルを印象づけた試合がある。2月、クロスボーダーラグビーでブルーズと戦った試合で存在感を示した。
後半38分にはトライを挙げたが、人々を驚かせたのは、それ以外のシーンだった。
後半23分にベンチから出てピッチに立つと、短い時間の中で、相手を弾き飛ばし、引きずって走った。
「あの試合は、いろんな人に評価してもらいました。あそこで出来たプレーを、次の試合でもやろう、と思いました」
毎試合、自分の100パーセントを出すことに集中した。それをやり切れば自信になる。そして、また次の試合へ。
そのサイクルをくり返し、しっかりと11番のジャージーをつかんだ。
チームの成長を感じている。
今季はSHファフ・デクラークがケガで戦列から離れた。現在は復帰したCTBジェシー・クリエルも、同様にプレーできない時間が長かった。
しかし、チームは崩れなかった。
「少なからず、ふたりに頼っていたところはあったと思います。でも今季、その存在がなくなった時、自分たちでどれだけやれるかやってやろうぜ、というマインドセットになれていたと思います」
チャンスを掴んだ選手たちが思い切ってプレーする姿を見て、チーム全体が熱くなった。
準決勝で戦う相手、ワイルドナイツには今季のレギュラーシーズンで2敗している。「3回続けて負けるわけにはいかない」と決意を口にする。
2週間前の対戦でも14-43と敗れている。
その試合を振り返り、「自分たちがやってきたことを出せなかった」と振り返る。
しかし、その原因を取り除けばやれる。自分たちのスタイルを出せたら勝てる。
「その自信をつける準備を2週間してきました」と話す。
WTBとしては、キックをうまく使う相手に仕事をさせないことが大事だ。それを、「相手のスキルに付き合わない」と表現する。
「僕の仕事は外にボールを呼び込み、トライを取り切ること」
自分の走りを多くのファンの前で披露したい。
1年前の準決勝にも出場したが、その時はベンチスタートだった。
「今回は先発。嬉しいけど、責任も感じ、緊張もすると思いますが、思い切ってプレーしたい」
日本代表になるためにイーグルスに移籍したその意志はぶれていない。
大舞台で爆発的な走りを見せたなら、思いも届く。