2シーズン連続で断崖絶壁にいる。
大阪の花園近鉄ライナーズは、下部との入替戦で2部首位の浦安D-Rocksと激突する。
D-Rocksとは2シーズン連続でのマッチアップとなる。1部残留を決めた前年度と同様、スクラム、接点をはじめとした局地戦で優位に立ち、生じたスペースを有効活用したい。
出場すればキーマンとなりうるのは、ジェド・ブラウン。身長186センチ、体重105キロの33歳は、持ち前の献身性で攻防を引き締める。
5月5日、ホームの東大阪市花園近鉄ラグビー場。三菱重工相模原ダイナボアーズとの最終節で先発した。後半27分までプレー。36—46と15敗目を喫して最下位に終わるも、光るシーンを作った。
11点差を追う後半9分のことだ。敵陣ゴール前右のラインアウトからの展開で、自らトライをマークした。球をもらい、ひらひらとタックルをかわして決めた。
その約2分後には、自陣22メートル線付近左中間でジャッカルを繰り出した。ダイナボアーズの反則を誘った。
接点で向こうが持つ球へ絡むこの動きを、かねて得意にしていた。
「孤立している走者がいたら(狙う)」
来日は2019年で、今季は連続居住年数で5年目に突入した。リーグ内では国内出身者と同じ「カテゴリA」に区分され、外国人枠の上限とは無関係に出場機会を得られる。
日本代表資格も持てる。「近鉄のためにハードワークし、その流れで選ばれれば」と、まずはフォア・ザ・チームを誓う。
「カテゴリAになったことで、貢献できることが増えています。ルースフォワードの位置は全部できる。やって欲しいと言われれば大概のポジションに入れます」
ニュージーランド出身だ。2012年からはカンタベリー州代表として、州代表選手権でプレー。17年にはスーパーラグビーのクルセイダーズにいて、以後は親交の深いコーチとの関係性からタスマン代表、ブルーズへ在籍も、その時点で、燃え尽きていた。
「ニュージーランドでやり切った感がありました。それまでに3度、大きなけがをしました。人生の新しいページをめくって、違うところに行こう。そうして辿り着いたのが日本です」
ライナーズでの競技活動に加え、この国の文化、環境が気に入っている。
「日本に来たのが一番いい決断だった。人の優しさ、コンビニや交通機関の便利さ。神戸に来た時もちょっと旅行できた。山、川、自然はきれいで、ニュージーランドとも似たところがある」
休日は国立公園を回る。普段は「家から200メートル先」にある和食店で「温かい海老天ぷらそば」「鯖寿司」を食べる。ワールドクラスの戦士がリーグワンに参戦しては焼肉、江戸前寿司を楽しむなか、趣味が渋いような。
18、24日に東京、大阪である入れ替え戦では、通好みの働きでクラブの立ち位置を保ちたい。