常勝チームのプライドが詰まっていた。
藤崎春菜主将が紅潮した表情で言った。
「この1位という場所に戻って来られて嬉しい。チームを誇りに思います」
5月5日、6日におこなわれた『太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2024』第3戦・鈴鹿大会で、ながとブルーエンジェルス(以下、NBA)が2大会ぶりに頂点に立った。
ファイナルの舞台で、東京山九フェニックスを破った(35-17)。
昨季の年間王者(全4大会で優勝)NBAは今季第1戦の北九州大会では優勝も、第2戦・熊谷大会の準々決勝で日体大に敗れる。連続試合勝利は33で途切れ、悔しい思いをした。
鈴鹿大会にはリベンジの思いを胸に臨んだ。
決勝戦開始早々、躍動したのはフェニックスだった。フリーキックからの攻撃で、相手防御のインサイドを石田茉央が突破、インゴールにボールを置いた。
キックオフ後、35秒で5点を刻み、コンバージョンキックも成功。7-0とリードした。
2分30秒には、NBAの反則からPKを得て速攻を仕掛ける。
中島涼香がトライラインを越え、ふたたび大黒田裕芽のキックも成功。12-0とした。
前後半7分ずつの試合時間で、12点を先行されるのはきつい。
しかしNBAは慌てることなく、選手たちは互いに声を掛け合ったという。
藤崎主将が振り返る。
「熊谷ではディフェンスが良くなかった。1対1で倒せず、コミュニケーションも足りませんでした」
その結果を受けてチームは、今大会の1週間前、長門市の青海島(おおみじま)に出かけた。
ロテ・ライカブラ ヘッドコーチの発案だった。
キーワードは「もう一度、家族になろう」。
練習後、キャンプ場に行き、バーベキューをしてバンガローに泊まる。いろんな話をした。これまで以上に全員が親密になった。
夜が明けて、みんなでグラウンドに出た。
一体感が増した成果は窮地に生きる。12点リードされたけれど、落ち着いて自分たちがやるべきことを再確認し合った。
「ミスが出ていましたが、それは必ず起きること。そのあとが大事です」
もっと声を掛け合って守ろう。ミスが出たら、強いボールキャリーでリセットし、そこから攻めよう。
試合中に修正できた。「全員で同じページを見てプレーできた」と主将は胸を張った。
チームを勢いに乗せたのはルーキーの新野(しんの)由里菜だった。
昨季の日体大主将は3分30秒過ぎ、自陣深い位置でパスをもらうと急加速で防御を突破して80メートルを走り切った(Gも成功)。
前半のラストプレーでも新野は輝いた。
右スクラムから左へ運ばれたボールがラックから出ると、タテに走り込んだ背番号6がディフェンダーの隙を突破してトライを奪う。10メートルの初速ではチームナンバーワンの走力が光った。
Gも成功。NBAは14-12とリードして前半を終えた。
後半はNBAの時間となった。
開始直後にアマーリ・ハラがトライを奪うと、4分には、新野がこの試合3トライ目。ジラワン・チュトラクンも左サイドを駆け抜けた(35-14)。
試合終了間際、フェニックスに5点を返されるも、ファイナルスコアは35-19。快勝だった。
クライマックスの一戦での3トライを含め、今大会6トライを挙げた新野は、逆転勝ちに貢献したパフォーマンスについて、「悪い流れを、自分の持ち味であるスペースを突くプレーで止められて良かった」と初々しさを見せた。
藤崎主将はニューヒロインのことを、「日本人選手、外国人選手に分け隔てなくフレンドリー」と評し、それもチームの強みであるファミリー感を強くしている要因のひとつとした。