普段は大阪弁を話すようだ。
「ただ、インタビューでは丁寧な言葉を使わないといけないので英語で」
こう表情を崩すのはヴェティ・トゥポウ。24歳のラグビー選手だ。5月3日、所属する静岡ブルーレヴズの拠点で話した。
加盟する国内リーグワン1部で、鮮烈な印象を残している。
関西大学Aリーグの摂南大から今季途中に加わると、アーリーエントリー(所定の条件をクリアした大学4年生の選手が卒業前にプレーできる制度)によって第7節でデビュー。2月24日、相模原ギオンスタジアムで後半32分にピッチに立った。三菱重工相模原ダイナボアーズに45-53と惜敗も、40分には初トライを記録した。
圧巻だったのは4月13日の第13節。静岡・IAIスタジアムにクボタスピアーズ船橋・東京ベイを迎えた日のことだ。
後半12分に3度目の出番を得ると、突進また突進で昨季王者でもある相手を圧倒した。ロスタイムには自らインゴールを割った。前半終了時に24点あったビハインドを埋め、31-31とドローに持ち込んだ。
19日の第14節からは、2試合連続で先発した。東京・秩父宮ラグビー場で初スタメンを飾った東京サントリーサンゴリアスとの一戦では、31-31と引き分けるまでFLとしてフル出場を果たした。後半9分には、敵陣ゴール前左でのモールの脇を突っ切りフィニッシュした。
身長190センチ、体重92キロのサイズで100メートル走のタイムは11秒台前半。母国では7人制、15人制とふたつのラグビーを楽しみながら、陸上の短距離走にも取り組んでいた。
「ただ、まっすぐ行くだけです」とタックラーを引きずるランニングで、藤井雄一郎ヘッドコーチ、採用の西内勇人氏からの評価を高める。スクラムや接点の動きを指導する長谷川慎アシスタントコーチには、ポテンシャルと人間性に太鼓判を押される。
「ネイティブのような日本語を喋れるからコミュニケーションが取れる。(空中戦の)ラインアウトでのジャンプは速い。スクラムでも細かいディティールはまだこれからだけど、瞬発力がある。何より言った(指導した)ことはちゃんと勉強してきて、練習する。やろうとする」
最終節を2日後に控え、本人は手ごたえを口にした。
「しっかり準備できればいい試合ができるとわかりました。次のシーズンに向けて自分のフィットネスを上げたら、もっとできることが増えると思います」
日本には友人や親せきが多い。NECグリーンロケッツ東葛のナサニエル・トゥポウ、昨年3月までブルーレヴズにいたオーストラリア代表経験者のイシ・ナイサラニはいとこにあたるそうだ。
大学3年の冬、その頃在籍していたナイサラニにブルーレヴズのクラブハウスに招かれたことがある。
開催されたのはクリスマスパーティだ。歓談中、当時の指揮官で現アシスタントコーチの堀川隆延に「どこでプレーしているの」と聞かれた。自身の状況を伝えたら、翌日にナイサラニから電話をもらった。練習参加が叶い、まもなくスカウトされた。
「フィジーに戻っても、自分のような選手がたくさんいる。日本にいる方が自分にとってはベストです」
自身のストロングポイントを、日本代表でも還元したい。まもなく連続居住5年目に達し、代表資格を掴める。