25回目にして初めて日本チームが頂点に立つことになった。
4月28日(土)に始まったサニックスワールドラグビーユース交流大会は5月3日(金・祝)に4日目の試合が開催された。
1位〜4位決定トーナメントの準決勝では、大阪桐蔭と桐蔭学園が勝ち、ともにファイナルへの進出を決めた。
結果、コロナ禍に海外チームの出場がなかった大会を除き、初めて日本チームから王者が生まれることが決まった。
ファイナリストとなった大阪桐蔭と桐蔭学園は、ともに激戦を制して大舞台に立つ権利を得た。
大阪桐蔭はサウスランド ボーイズ ハイスクール(NZ)に24-17と勝利し、桐蔭学園はセント オーガスティンズ カレッジ(豪州)に29-22と競り勝った。
▼日常のスタイルに、より集中。
NZ王者を破った大阪桐蔭は、先制パンチを放って先に試合の主導権を握った。
前半3分、9分にトライを重ね、16分にはPGを追加した。
17点を先行する滑り出しだった。
2つのトライは両方とも、相手の反則で得たPKで敵陣に攻め込んで奪ったものだ。
先制トライはモールを押し切り、2つめは、ラインアウト後のモールから攻め、PR川相喜由がラックサイドのスペースにうまく入り込んでインゴールに入った。
相手をコントロールした時間帯だった。
前半終了間際、モールから1トライを許して17-7のスコアでハーフタイムに入った。
そして迎えた後半、相手は焦点を絞って大阪桐蔭を攻め立てた。オールブラックスのダミアン・マッケンジーの兄、マーティー・マッケンジー アシスタントコ—チは、「徹底してボールを維持し続けるスタイルでやろう」とハーフタイムのロッカーでサウスランド ボーイズ ハイスクールの選手たちに呼びかけたという。
青いジャージーが勢いを増して前へ出てきた。
後半2分、HOジェイク・エバンスは大阪桐蔭のラインアウトで後方に抜けたボールを手にすると、豪快に走り切る。
さらに激しく攻め続けた相手は、同16分にPG成功。スコアは17-17となった。
しかし、大阪桐蔭はそこで相手に飲み込まれなかった。
20分、キックカウンターからボールを大きく動かし続け、FW、BKが一体となって攻めた。9フェーズ目にLO泊晴理がトライラインを越える。
勝ち越し、そして、そのままのスコアで勝ち切った。
攻守に体を張り続けてきたCTB名取凛之輔主将は試合後、厳しかった後半を振り返り、「(防御では)ピラーゾーン(ブレイクダウン周辺)からしっかり前に出て、ファーストタックラーが下に、2番目の選手がボールを殺す。オフロードパスが上手いのでそこに注意しましたが、いつものスタイルを、より徹底するようにしました」と話した。
サウスランド ボーイズ ハイスクールのCTBテイン・ウィジー主将は、勝者について「強くて、速くて、重くて、ワールドクラスでした」と称えた後、仲間たちの勇敢さにも触れ、「みんないいプレーをしていた。誇りにできる」と爽やかだった。
そして「描いていたプランを実行させてもらえなかった」と潔かった。
▼いつもより速いラグビーで勝負。
桐蔭学園も自分たちの強みを出して、相手を上回った。
試合開始直後の5分に先制トライを許したものの、その後、時間の経過とともに自分たちのペースに引き込んだ。
16分にスクラムから攻めてトライを返すと、前半終了間際には、相手の攻撃の途中にターンオーバー。そこから果敢に攻めた。
多くの人とパスを集中させた攻撃は、最終的にトライに結びつく。前半を12-10とリードして終えた。
結果的にこの得点シーンが、この日の桐蔭学園のアタックマインドを示していた。
後半に入ると、桐蔭学園の意志が明確に伝わる時間が長くなった。
6分、9分とトライを重ねた。紺色のジャージーは動き回り、タテに力強く、たくさんのパスをした。
振り回された黄色いジャージーには、前半序盤の力強さはなくなっていた。ヘトヘトになり、ピッチ上で歩く選手が何人もいた。
それでもセント オーガスティンズ カレッジは、22分、25分とトライを挙げ、一時は12点差がついていたスコアを22-22としたのだから地力と闘争心があった。
決勝点は後半31分だった。
スクラムでの相手反則でPKを得た桐蔭学園は、SO竹山史人のタップキックからの速攻を号砲に全員で攻めた。
重ねること11フェーズ。最後は右外で崩し切って決勝トライを挙げ、死闘にケリをつけた。
FL申驥世主将は、「普段からやっている速いラグビーをもっと速くして、相手を疲れさせようとしました。そして、ラックを作ると相手の長い手にやられてしまうので、前へ出て立ってボールをつなぐことを意識しました。リードしても守りに入らず、攻めていけたのが良かった」と試合を振り返り、決勝へ向けて、「(全国)選抜で完敗した大阪桐蔭さんにリベンジしたい」と意気込みを口にした。
▼米・ジェスイットハイスクール初勝利。
上位チームが戦う、メインスタジアムの試合に多くの人の目が集まった一日。しかし他のグラウンドでも、選手たちの熱があちこちで発信されていた。
13位〜16位決定トーナメントでは、ジェスイットハイスクール(アメリカ)がチュンブク ハイスクール(韓国)に21-14と勝ち、今大会初勝利を挙げた。
アメリカからの出場チームは大会初。歴史に刻まれる勝利だ。
WTBアラン・コルダーノが挙げた2つを含む3トライは、プールステージの3試合でノートライに終わった同チームにとっては、大きな進化を示すものだった。
全員が高校でラグビーを始めた。アメリカンフットボール出身者が多く、2トライのコルダーノもランニングバックの位置でプレーしていたそうだ。
アンドリュー・アコスタ ヘッドコーチは、「プールステージは相手の圧力を受けて自分たちのスタイルを出せませんでしたが、きょうは目指しているスタイルを出せた。若い選手たちの成長を感じる」と頬を緩めた。
相手の韓国も、SOイ・ソンジェがチーム今大会初得点、初トライを記録。持てる力は出し切った。
中華台北のジェングオハイスクールは、ウィントフック ジムナジウム(ナミビア)に17-29と敗れた。しかしチームは、プールステージでは奪えなかったトライを奪い、力がついたと感じさせた。
同校は創部から80年と、中華台北の高校の中で一番長い歴史を持つラグビー部だ。
奪った3トライの中のひとつを自らのプレーで挙げたウァン・ボーシュェン主将は、「ここまで戦ってきた相手から学んだことを生かし、きょうの試合は戦いました。これから、攻め方、トライの取り方などを、もっと学んでいきたい」。
5月5日(日・祝)には、大会のチャンピオンを決めるファイナルがおこなわれるとともに、参加各校から推薦された数名ずつの選手たちでコンパインドチームを2チーム作り、戦う試合もある。
この『ワールドXVフレンドリーマッチ』は、2018年、2019年に続いて、今回が3回目の開催。この時だけの、ドリームチームの姿を記憶に刻もう。
※最後のフレンドリーマッチの開催回数について、訂正、加筆しました。