初めて背に「10」がプリントされた、真紅のジャージーに袖を通した。
4月28日、関東大学春季大会がおこなわれ、帝京大は今季初の公式戦を白星で飾った。法大に61-7と大差をつけた。
その試合で初めて公式戦の先発SOを任されたのが、2年生の本橋尭也だ。
昨季は1年生ながら対抗戦と大学選手権で6試合に出場するも、いずれも控えからの登場。目指した背番号10は、井上陽公(現・SA広島)が背負っていた。
「去年は4年生の背中をずっと見ていましたが、いなくなった今、次の10番に、という自覚や責任を感じています」
つい10日前までフィジーにいた。U20日本代表候補メンバーを中心に構成されるJAPAN XVの一員として、パシフィック・チャレンジ2024に挑んでいた。
2年前は最終選考で高校代表から落選。しかし、今大会では全3試合に12番で出場できた。
「海外のチームと戦うという、ここでは味わえないことを肌で感じられたのは大きかったです。知らない選手同士と関係性を作っていくことで、人間的にも成長できたと思います」
CTBにFBもこなせる器用さを兼ね備えるも、帝京大ではSOで勝負したい。
この日は182センチ、89キロの体躯を生かしたダイナミックなラン、ロングキック、周りを活かす好パスを随所で見せた。公式戦初先発に緊張こそあったが、「後半は少し自分らしさを出せた」と振り返る。
ただ、「勝って反省できるのはよかった」と話すように、自身のプレーに満足はしていなかった。味方との連携に、改善の余地があったという。
「U20に行くデメリットは、帝京でラグビーができないこと。まだ1年生とコミュニケーションを取れていなかったり、新チームでのコネクトがまだまだできていません。そんな中で今日の試合に出させていただけた。経験値として大きいです。やっぱり、試合に出ないと分からないことがいっぱいありますから」
SOとして周りとの繋がりを強く意識する。「一番意思疎通がしやすい人」と話す兄のLO拓馬からも、FW視点での意見を積極的に聞く。
「もっとコミュニケーションを取って、(最終的には)僕の動きにみんながついてきてくれるような、喋らなくても繋がれるくらいの状態でいたいです。自分からも、もっと発信できたらと思っています」
大学選手権3連覇中のチームで1年間過ごし、その強さの秘訣を「誰一人さぼらず端から端までを全員で走り回って、泥臭くプレーできること」とみる。
それは普段のトレーニングでも同じ。だからこそ危機感がある。U20の活動は夏まで続くから、自分が不在の間、ライバルは百草でのハードワークで力を伸ばすだろう。
「課題はディフェンスです。当たり負けしないタックルを、日々の食事と練習でできるようにしたい。あとフィットネスも上げたいです」
スキのないSOとなって、常勝軍団の正SOを目指す。