2024年4月、社会人からラグビースクールまで各レベルのチームが新入部員を迎えている。特に部員不足に悩むチームにとって、4月はその解消を図るべき大切な時期だ。
4月20日、東京都下、八王子市の東京都立大グラウンド。東京都立大ラグビー部が、朝から新入生歓迎(新歓)行事の大詰めとなる練習体験会を開いた。
1年生の入部希望者、選手8名、マネージャー3名の計11名が集った。ラグビー練習ジャージを身に着け、スパイクを履いた経験者や運動ができるジャージ姿の参加者も混じる。
今季のスキッパーHO中原亮太主将(4年、湘南)らがスケジュールを説明する。先輩部員らと7、8名のグループを作る。まずは楕円球に慣れるためにボールをドリブルして20メートルほど先のマーカーを回り戻る。次に仲間につないでいくリレー。なかなか思うようにまっすぐ動かない楕円球。二人一組で楕円球を背中に挟んでマーカーを回ったり、額に挟んで回ったり。楽しくも落とさないように工夫をして仲間意識を高める。
続いてタグを腰につけて取り合う鬼ごっこだ。ラグビー経験者が素早く相手を追い込んで奪うが、なぜか女子マネージャーや1年女子が最後まで残ることが多い。
パスの練習は、ステップを踏みながら行う。先輩にも負けないオフロードパスを通す者から、なかなかうまく受けることができない未経験者まで。ゆっくり学ぼうと先輩は声をかける。
マネージャー希望者は先輩たちに仕事を教えてもらう。「水!」の声がかかると即座に水を選手のもとに運ぶ。
続いてタグラグビー。4チームに分かれて10分間ほどおこなう。マネージャーも加わり楕円球を追っていた。
今年春、都立大は大学院から2年生まで選手22名、マネージャー9名の部員でスタートした。15人制を戦うにはギリギリの数。そのため4月は新歓のみだ。とにかくラグビー部に関心をもってもらう。4月6日の大学全体のサークル紹介の2日後には、多磨ニュータウンにある公園で「バーベキューパーティー」を開いた。50名近くが参加した。そして11日は希望者が多く人数を制限15名ほどにした「しゃぶしゃぶ食べ放題」。希望者が絞られ4月第3週にはキック大会、マッスルクラブ、セブンズ大会などをおこなってラグビー部の姿を見せた。
チームには「ラグビーを通じて幸せになって欲しい」という目標がある。今季就任5年目を迎えた藤森啓介ヘッドコーチの思いだ。厳しい練習の中にも和気あいあいの一体感を作ってきた。それは1年生も感じて入部の動機になっている。
福岡・戸畑高出LO/FLの石川蒼太さんは「高校はクラブチームでした。新歓が楽しくて大学でも続けようと思いました」。花園常連校からやってきたNO8谷口樂さんも「チームの雰囲気がいい」。高校まで一緒に楕円球を追いかけた同級生には高校日本代表、そして大学日本一を目指す者がいる。「違う環境でラグビーを頑張ります」。都北園高の髙杉美優さんはマネージャー希望だ。「高校までバレーボール部。新歓で先輩たちが優しくて楽しい」。みんな、はまってきた。
4月27日現在、入部者は選手11名(内経験者8名)、マネージャー6名の17名。大量入部を果たした。まずは5月の都内国公立大会で2年ぶりの優勝、そして「秋は関東大学リーグ戦5位以内」(中原主将)を実現したい。
<リーグ戦1部昇格目指す朝鮮大は12名、地区対抗覇権奪回へ学芸大6名の経験者が入部>
ゴールデンウィークの4月28日、グラウンドは36℃の暑さだった。朝鮮大では東京学芸大との合同練習会がおこなわれていた。小平市、小金井市にキャンパスがある両校、お隣同士で学芸大選手たちは多くが自転車でやってきた。
朝10時から両校がアタック、ディフェンスを順番におこなう。お互いに確認したいセットプレー、地域でプレーを続ける。約1時間後に終えると続いてFWはスクラム、セットプレー。BKはフェーズを重ねる練習を繰り返した。
最初、朝鮮大アタックではフィジカルをいかしたゲインで学芸大ディフェンスを切り裂きインゴールへ運ぶ。
朝鮮大は昨季、ケガ人が出るとリザーブが2名で戦ってきた。またはメンバー数がそろわず棄権もあった。
今季は選手18名、マネージャー2名でスタート。4年生が11名いる。うち8名は高校3年時に冬の花園大会4強を勝ち取った大阪朝鮮高出だ。入部する選手の高校は、ほぼ大阪、愛知、東京の朝鮮高校に限られる。4年11名が来季はいない。今年の春が重要だった。
結果は12名がラグビー部を選んだ。大阪10名、東京2名。グラウンドに部員が勢ぞろいする。30名強とはいえ久しぶりの光景だ。
共同キャプテンのFL金智成(キン・チソン)は話す。「実力がある1年生が入ってくれました。今シーズンから試合に出てくるでしょう。上級生にとってけっこう下からの圧力を感じています」と声は嬉しそうだ。
4月21日、法大グラウンドで開催された「関東大学ラグビー連盟セブンズ大会」。昨年は現2年生の李智寿(リ・チス、大阪朝高)が1年生で活躍し、’23年度U20代表候補選出につながっていた。朝鮮大は1回戦でリーグ戦1部の立正大を35-14で破ると勝者トーナメントへ。同じく2部を戦う山梨学院大とは24-21の接戦を制した。部史上初のベスト4へ。準決勝は優勝した日大に21-40で完敗も成果をつかんだ。この大会には大阪朝高出の1年生2名がメンバー入りし貢献した。
学芸大との練習。SHを担った1年生金来温(キン・レオン、大阪朝高)さんは「朝大で先輩たちと一緒に1部昇格へ戦いたい」。5月25日、明治学院大を迎えて練習試合を戦う。
一方、学芸大のアタック。BKがハーフラインでボールをもらうと鋭いステップでトライラインを越えた。今春、入部したばかりのCTB木村粋雅さんだ。昨冬の花園優勝校・桐蔭学園からやってきた。178センチ86キロの体躯も魅力だ。
学芸大も選手不足が深刻だ。2年生はわずか選手2名、マネージャー1名。大学院から2年生まで選手12名、マネージャー4名、女子選手1名の陣容。15人制大会には足りない。特に昨年度までチームの柱となった院2年LO安達拓海、4年LO安達航洋の安達兄弟が今春、卒業した。
SH北澤陽斗主将(茗渓)は「安達兄弟の抜けた穴は想像以上に大きいと感じています。(190センチ台の)ラインアウトはもちろん、スクラムを後ろから押す力が無くなった」という。今季は「BKに走力がある選手が多い。トライを取り切りたい。FWは高さが無い分、低いタックルを意識しコンタクトを重視していく」。
1年生は男子選手が6名入った。全員が経験者だ。桐蔭・木村さんは練習中に負傷した。佐藤真太郎さん(仙台三高)はNO8で朝鮮大と対した。「自分は165センチと低い、だからこそタックルを決めていきます」。今季も昨年に続き秋田中央高から1名が入部。愛知・時習館高、盛岡一高、春日部高と続く。そして女子部員は2名、千葉・麗澤高に筑紫高、マネージャー1名も関東学院六浦高の経験者。チーム練習は男女一緒に楕円を追い求めていた。
今週5月3日に上智大、19日は国士館大と練習試合。6月、都内国公立大大会を連覇し、冬は全国地区対抗大会の覇権奪回を誓う。