太鼓判を押していた。帝京大ラグビー部の相馬朋和監督は、「誰がどう見てもいいでしょう」と発した。
「バランスは取れているし、スピードもあるし、サイズもあるし、これから身体を鍛えればもっと良くなるでしょう」
ルーキーの福田大和のことだ。
4月28日、都内の本拠地グラウンドで赤いファーストジャージィを着た。
関東大学春季大会Aグループの初戦へ、先発フル出場。大学選手権3連覇中の強豪にあって、入部まもないこのタイミングで公式戦のレギュラーに入ったのだ。
身長187センチと上背がありながら、地上戦にも強いFLだ。この日は鋭いラインブレイク、キックチェイスを披露するなど献身。法大を61―7で下した。
本人は「まずは80 分間、出続けられて、チームの勝利に貢献できたのはすごく嬉しいです。試合も楽しかったです」としつつ、満足していなかった。
「最後までタフに帝京大のラグビー——しっかりしたコンタクト、走り続けること——をやるということが、まだ、できていなかった。もっとチャンスに絡んだり、2人目の寄りなどで運動量を増やしたりしたいところです」
大学のトレーニングに参加し、約1か月が過ぎた。誰もが唸る猛練習を体験している。
実戦形式のトレーニング、切り返しの伴う走り込み、うつ伏せの姿勢から素早く起き上がってのダッシュ…。
「(全力を)出し切ってやるので、全部がしんどいです。出し切らないと、できないので、常に出し切っています。いまはついていくのが精いっぱい。そんななかでも先輩たちは『このままじゃだめだ』とハードワークしている。自分もそれ以上のレベルでやらないと、(ゲームにも)出続けられないです」
地道な動きの反復に追い込まれるなか、わかったことがある。腕に覚えのある選手がこのハードルを乗り越えているから、帝京大は強いのだ。
「先輩たちは掃除、片付けなど、フィールド外でもチームのために動いてくれている。助かっています」
愛知の中部大春日丘高では2、3年時にニュージーランドへ留学。卒業間際には高校日本代表となり、イタリアに遠征した。
4月にはさらに出世した。日本代表の首脳陣が有望な大学生を鍛える、ジャパンタレントスコッドの第1期生14名へも新1年生で唯一、選ばれた。世代の筆頭格として注目度が増しているが、当事者は異なる実感を抱く。
同じ高校、大学のOBには、同じポジションで日本代表主将となった姫野和樹がいる。
今季の帝京大の主将である青木恵斗も、姫野を見本に研鑽する。2月に日本代表候補となり、ジャパンタレントスコッドにも名を連ねた。
福田は、身近にいる青木のパワー、上半身の厚みに舌を巻く。上には上がいるのを自覚する。
「周りから(前向きに)言っていただけるのはありがたいんですけど、恵斗さんなどの先輩たちを見ていたら(自身は)足りないことだらけ。慢心している状況ではないです」
法大戦の3日前、東京・明大八幡山グラウンドであったジャパンタレントスコッドの初回活動へ参加した。日本代表のエディー・ジョーンズヘッドコーチとも個人面談ができた。その前後で代表やクラブのS&Cコーチとも言葉をかわし、ターゲットを定めた。
来年の代表デビューを見据え、今年はその土台を作るつもりだ。
「日本代表になるのは目標ですが、自分のなかではひとつずつ、です。今シーズンは身体を作って、次のステップに行ける準備をしていきたいです。この1年で自分がどう変われるかで、残りのラグビー人生が大きく変わってくる」
当面は、6月に予定される第2回目のキャンプまでの宿題に取り組む。
ジョーンズヘッドコーチに告げられたのは、「身体を変えてみせろ」。現状で「98キロ」だという体重を「100キロ」まで引き上げたい。
「エディーさんには『とにかく準備を。来年、自分がその(ナショナルチームへの)ドアをノックするイメージを持って、今年1年、タフにやろう』という言葉をもらいました。(代表に)なれるかなれないかというよりは、自分との戦いだと思っています。なれたとしても、なれなかったとしても、やり切りたい」
目標達成へのプロセスを味わっている。相馬監督は「青木が姫野を目指すように大和も青木を目指して、皆、代表で活躍してくれたら嬉しいですね」と述べた。