27歳になる3日前の4月14日、実戦復帰を果たした。
佐々木剛は東芝ブレイブルーパス東京の7番をつけ、東京・秩父宮ラグビー場に立った。コベルコ神戸スティーラーズに挑んだ。
リーグワン1部の第13節。順位で3つ下にあたる5位の相手と、40-40で引き分けた。今季12つめの白星こそ逃したが、プレーオフ行きを決めた。
自身は後半31分までフィールドに立った。自陣ゴール前でのジャッカル、カウンターアタックを仕掛けてくる相手へのロータックルなどで魅せた。ひとまず安どできた。
「コンタクトはもうちょっとやられるかと思ったのですが、準備がよかったのか、そこまで負ける場面はなかった。全体としてよかった。ジャッカルは自分の強みだったので、出てよかったです」
近年、徐々に出番を増やしており、今シーズンは開幕から主力に絡んだ。
頬骨の骨折のため第8節を最後に一時離脱も、「焦っても治らない怪我。骨がつくまで他の部分を上げていこう」。同月上旬から少しずつ練習へ混ざり、スティーラーズ戦への準備期間からコンタクト練習へ戻っていた。
序盤に開幕8連勝と躍動したブレイブルーパスには、激しい部内競争がある。
試合に勝つたびに、主力が「K9」へ謝辞を述べる。実戦練習で相手役を担い、圧をかけてくる控え組を讃えているのだ。
「K9」には、ゲームメンバー昇格へのオーディションが課されてもいる。「K9」でのアピールにより這い上がった選手は、複数いる。
だからしばらくフィールドを離れた佐々木も、この春、希望を胸にグラウンドへ出た。
その流れで、スティーラーズとの重要な一戦で持ち場のFLへリストアップされた。翌週の第14節(対三重ホンダヒート/三重交通G スポーツの杜 鈴鹿/○8-7)でも、7番を掴んだ。
27日には秩父宮で、東京サントリーサンゴリアスとの第15節にも先発する。プレーオフで再戦の可能性がある好カードを前に、気を引き締める。
「メンバーに選ばれたからといって油断はできないし、メンバーから外されたからといってもうチャンスがないわけではない。常に試合をイメージする」
身長180センチ、体重101キロ。八戸西高から入った大東大で1年生レギュラーにになった時期は、器用さが光った。球を持ってタックラーに当たる瞬間、タックラーの芯から逃れながら前進。巧みにオフロードパスを操った。
20歳以下日本代表に選ばれたあたりから、正面衝突を厭わぬようになった。
突進、タックル、ジャッカルは関係者の知るところとなった。最終学年時は主将となり、卒業後は京産大、東海大で自身と同じ役職だったLO兼FLの伊藤鐘平、CTBの眞野泰地らとともにブレイブルーパスに加わった。
1対1で圧倒するのをモットーとする古豪にあって、取り組んだのは身体作りだ。うまさと気迫を最適化すべく、身体のスペックを大きくした。
いつしか、ウェイトトレーニングのスコアは大幅に上がった。
ベンチプレスは「130」から「150」に、学生時代に注力していなかったというスクワットは「140」から「調子いい時で190」。ゲームに出れば、ぶつかった際の踏ん張りが強くなったと感じる。
最近では、新加入した同じポジションのシャノン・フリゼルとも切磋琢磨。圧巻のパワーに触れ、刺激を受ける。
「攻撃でも守備でも目を引く、ブレイブルーパスで必要な選手になっていくのが目標です。その先に、(日本)代表も見えてくる」
今年度の台風の目となったクラブの、得難きバイプレーヤー。旧トップリーグ時代の2009年度以来となる日本一を目指し、ひたむきにファイトする。