待望の復帰が公表された4月18日のことだ。
「お久しぶりです! 元気ですか?」
横浜キヤノンイーグルスのジェシー・クリエルは、都内の本拠地で全体練習を終えるやクラブハウスの応接室へ移動した。意気込みを語った。
2日後、国内リーグワン1部・第14節でベンチ入り。東京・秩父宮ラグビー場で三菱重工相模原ダイナボアーズを迎えるその一戦で、第5節以来のメンバー入りを果たす。
1月に手のけがをしたため帰国。オペ、リハビリに注力してきた。もともとダイナボアーズ戦で戻るのを目指してきたというから、今回は予定通りのカムバックと言える。
3月に日本へ戻ってからは、計2試合をスタンドで観戦した。感じたことがある。
「ファンと一緒に試合を見たのはほぼ初めての経験でした。スクラム、モール、ラインアウトとひとつひとつの動きに皆が喜んでくれていました。自分もフィールドに出て、感謝の気持ちを伝えたいです」
身長185センチ、体重95キロの30歳。入部4季目を終えて迎えた昨秋には、南アフリカ代表としてワールドカップ2連覇を達成。身体能力と勤勉さの合わせ技を攻守に還元するキーマンであり、誰もが認めるチームマンだ。
関係者のなかでは、イーグルスで冬にけがをした当初は母国に戻るのを拒んでいたと伝えられる。このほど、その件が事実かと聞かれれば、実相をこのように説明した。
「イーグルスのメディカルスタッフは優秀です。特に宮崎(智之)は、いままで働いてきたトレーナーのなかでも1、2を争います。だから、まずは彼らの話が聞きたかったのです。その他、セカンドオピニオンももらいました。いろいろ検討したうえで、南アフリカにいる(今度の故障の)スペシャリストのもとへ行くのが最善だと結論付けました」
離れている間もイーグルスの戦いをチェック。「戦う姿勢が常に見られた。イーグルスの一員として誇らしかった」としつつ、こうも口にする。
「(離脱が決まった時は)がっかりしました。身を削ぐくらいの気持ちした。自分にとって、イーグルスで毎週プレーすることがどれだけ大切なことだったのか、どれだけ特別だったのかを再認識できました。いかに短時間で戻れるかを考えていました」
帰国後はすぐにフィールドへ飛び出し、ここ2試合は会場でレギュラー組のサポートに従事してきた。取材のあったこの日は、他の主力選手と連係を確認。さらにトレーニングが終われば、アナリストに練習中の統計の取り方について打ち合わせた。
「(プレー中の)キャッチングのクオリティ、キャッチの後のパスのクオリティをこだわって見ているんです」
どうやら、来日後にあたる「2~3年前」から意識しているようだ。継続的な取り組みを重んじる。
「ひとつひとつの練習において、細かいところで責任を果たそうと思っています」
次戦で勝てば2シーズン連続でのプレーオフ行きが決まりうるが、本人はこうだ。
「いままで通り自分の役割をやってチームに力を与え、周りにいい影響を及ぼしたいです。プレーオフのことはそこまで考えていないです。今週のミツビシ戦に集中する。先ばかりを見ると足元をすくわれます。鍛錬を重ね、いい準備をする。それさえすれば、結果はついてくる」
その意識を貫くことで、世界一になったことがある。