ラグビーリパブリック

「輪島のために」。日本航空石川、東京への校舎一時移転でも変わらぬ思い。

2024.04.08

PR川上聖翔は高1までCTB。ワークレートの高さが光った(撮影:福島宏治)

 多難の日々を乗り越え、全国の舞台に立った。

 日本航空石川は、3月23日からおこなわれた全国高校選抜大会に北信越王者として出場した。
 3か月ほど前の1月1日に発生した能登半島沖地震で、同校の寮に暮らしていたラグビー部員は被災した。校舎や寮は甚大な被害を受けた上、自衛隊の拠点でもあり、現在も復旧の見通しは立っていない。

 チーム全員が集まってラグビーができたのは、1か月後の2月4日からだ。中部大春日丘の宮地真監督の協力で、系列校の中部大学が岐阜県恵那市に保有する研修センターで寝泊まりし、トレーニングを再開できた。

 2月の北信越新人大会を制すると、再びチームは解散し、それぞれの実家に戻った。

「いつ集まってもいいように、日頃から鍛えておこう」

 石川出身のCTB上野魁心主将は、近所の鶴来高校ラグビー部の練習に参加させてもらったという。トレーニングの様子はチームのグループLINEに共有し、互いを鼓舞しあった。

 再集合は3月6日。今度は東洋大が力を貸してくれた。選抜大会までの10日間強、ラグビー部の寮やグラウンド、ウエート場が提供されたのだ。
「ここがまた素晴らしい環境でした。ご飯も美味しい」と紙谷直樹HCは感謝する。

 左PRの川上聖翔はいう。
「普段から周りのサポートをいただいていたけど、今回の地震があって物資の提供であったり、さまざまな生活のサポートをしていただき、より支えられていると感じています。試合に勝って恩返ししたいという気持ちが全員にある」

 元日から過ごしたイレギュラーな日々は、心身に大きな負担をかけただろう。それでも、上野主将は「みんな言い訳せずにハードワークしてくれた。キャプテンとしてとてもやりやすかったし、感謝しています」と話す。

 川上も同じ思いだ。
「僕らは全員が仲良いので、より今回のことで仲良くなれたかなと。みんな頑張ってるから自分も頑張れる。嫌なこと、悩みごとがあっても簡単に打ち明けられるし、そもそも(この生活が)嫌になることはありませんでした」

 選抜大会は1回戦で京都成章、敗者戦で佐賀工に敗れて大会を終えるも、佐賀工戦では14-15と、昨季の花園4強相手に1点差の接戦を演じた。
 粘りのディフェンスが光った。

 上野主将は胸を張る。
「勝ちたかったです。でも勝ち負け関係なく、みんなのハードワークは見ている人たちに感じていただけるものがあったと思う。そこに価値があると思っています」

 チームは選抜大会終了後、三たび解散した。次の集合は4月6日。今度は東京で再出発した。
 明星大学が一時避難先(最長3年間)として無償で提供してくれた青梅キャンパスで、新たな学校生活をスタートさせたのだ。同キャンパスは2015年の学部移転を機に、課外活動以外では使用されていなかった。現在はキャンパス内に仮宿舎の設置を進めている。

 7日に新入生も合流し、4月中旬からはオンライン授業も始まる。5月6日に入学式、それから対面での授業も始まる予定だ。

 川上は選抜大会後に決意を語っていた。
「輪島のために、という気持ちはみんなの心の中にあります。だから練習でも試合でも、より頑張れていると思う。東京に行っても、それは変わりません。1日1日の練習を大切にして、(同校初の)花園ベスト4の目標を達成したい」

横断幕には「AS ONE WAJIMA~輪島とひとつに~」(撮影:福島宏治)
今季は昨季のレギュラーが多く残っている。写真はLO立松大(撮影:福島宏治)
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