勝利を手にすることはできなかった。けれどたくさんのかけがえのない経験を得た2日間だった。
実行委員会の推薦を受けて全国高校選抜大会に初出場を果たした興國の村田賢史監督は、悔しさを口にしながらも清々しい表情でこう振り返った。
「本当に貴重な2試合でした。この経験を、必ず今後に生かさなければならないですね」
近年の大阪府内での戦いぶりを評価されてつかんだ今回のセンバツ出場。1回戦は中部大春日丘に前半20分まで0-7と食らいつくも、そこから突き放されて0-45で敗れた。
2日目の高鍋との敗者戦も随所にいいプレーを見せたが、勝負どころの場面で痛いミスが続き12-55で敗戦。このレベルで戦う厳しさを、身をもって痛感した。
「こちらの小さなミスを、相手は逃さず点に結びつけてくる。普段の練習からミスを許さない状況で取り組んでいるのだろうな、と感じました。これまでなら自分たちがトライを取れていたシーンでも、カバーが戻ってきて止められる。やっぱり簡単にはトライを取らせてもらえないなと」(村田監督)
もっとも、現在強豪と呼ばれる学校もみなもれなくそうした経験を重ねて一歩ずつ階段を昇ってきた。今回 “全国の壁”を味わった経験は、高鍋戦で奪った2本のトライとともに、チームが成長するための大切な糧になるはずだ。
東海大仰星や常翔学園、大阪桐蔭など全国トップレベルの名門校がひしめく高校ラグビー激戦区大阪で着実にクラブとしての基盤を築き上げ、今では毎年コンスタントに20人以上の選手が入部するようになった。近年はそうした強豪を倒して花園に出たいと志望する生徒も増えてきているという。学校が2026年、チームも2029年に創立100周年を迎えることもあり、大きな節目に向けて着実に強化を進めている。
村田監督が就任して3年目の今季は、フィジカル強化を最大のテーマに掲げてトレーニングを積んできた。毎朝6時45分から朝練を実施し、ウエートトレーニングのボリュームを大幅にアップ。食事に対する取り組みもチームとしておこなってきた。その成果は、今回の選抜でもプレーの随所に表れていた。
「僕自身、高校時代に花園や選抜大会に出場させてもらって(啓光学園のSOとして2年時に花園優勝、3年時に選抜優勝)、その経験が自分にとってすごく大きな財産になっています。そうした経験を、子どもたちにもさせてあげたい。今年はかなりしんどいことをやっているのですが、みんな本当にがんばってくれています。今回の試合を通して『自分たちもやれる』と感じてくれたら、また伸びるのではないかと思っています」
直近のターゲットは、4月に始まる大阪府の総体だ。その結果次第で、秋の花園予選のシード権が決まる。昨季は関大北陽がそこで決勝進出を果たし、初の花園出場を遂げた。今度は自分たちが、大阪に新しい風を吹かせたい。