時計の針は後半30分を回っていた。
21-24と3点ビハインド。目黒学院は22㍍ライン内側で相手の反則でPKを得ると、NO8ロケティ・ブルースネオル①が迷わず速攻をしかけゴール前まで攻め込んだ。そこからFWがサイドを攻める。東福岡も懸命のディフェンスを見せるが、3度目のサイドタックで、再びボールを持ったロケティがインゴールにねじ込んだ。
26-24。目黒学院がついに逆転した。
FB中村理応➀が落ち着いてコンバージョンを決めると、ノーサイドのホイッスルが鳴った。あずき色のジャージーが一塊になって、こぶしを天につき上げた。
「すごいことをやったなと思います」
竹内圭介監督も、興奮冷めやらぬ表情で試合を振り返った。
「ラインアウトを取れなかったり、モールであっさり取られたりというのがあったけど、それを上回るだけの、いいディフェンスで頑張って前に出ていた」と選手たちを称えた。
前半は、トスに勝った目黒のCTB石掛諒眞②キャプテンが風下を選択。
13分に東福岡が相手ゴール前のラインアウトから、HO須藤蒋一➀がサイドを突いて先制。17分には中央線付近のスクラムから右に展開、ラックから出たボールに須藤が鋭く走り込んでボールをもらうと大きくゲイン、ゴール前まで攻め込み素早い球出しでSO髙田哲也②-FB早坂俊吾➀とつないで左中間にトライ、10-0とした。
これに対し目黒学院は21分、相手陣でディフェンスからボールを奪うと、ラックから出たボールにLOフィッシャー慶音②が反応、トップスピードで走り込んでボールをもらうと、ディフェンダーをかわして30㍍を走り切ってインゴールに持ち込んだ。
前半終了間際には、東福岡がゴール前まで攻め込み、PKを得るとLO梁瀬将斗②がタップキックからの速攻でゴール下に持ち込み、コンバージョンも決まり17-7とし東福岡リードで前半を折り返した。
しかし、目黒学院の竹内監督は、前半の善戦に手ごたえを感じていた。
「風下で(トライが)1本-3本だったで、上出来だと。後半全然ひっくりかえせるし、手が届くところまで来たとハーフタイムの円陣で、選手たちに発破をかけました」
するとスクラムでプッシュして圧をかけ、後半9分には相手ゴール前でPK得るとFWが持ち込みラック、ディフェンスを寄せてからBKに展開、CTB石掛がタックルを引きずりながら腕を伸ばしてトライ、ゴールも決まって3点差とした。
追加点が欲しい東福岡は、14分に相手陣ゴール前ラインアウトからのモールでゴールポスト下に向かって一気に走り、そのままHO須藤がグランディング、24-14と再び点差を広げた。
しかし、目黒はあきらめないで攻め続けた。後半20分にはFB中村が風上を利用した50:22キックで敵陣に攻め込み、前に出るプレッシャーで相手のノックオンを誘った。そしてゴール前スクラムを得るとNO8ロケティがサイドアタックを仕掛け、ラックからボールを受けたCTB石掛がタテに切り込み、最後はラックサイドを突いたFL阿部史門➀が押し込んでトライ、コンバージョンも決まって再び3点差。こうなると試合の流れは完全に目黒に傾いた。そして冒頭の大逆転へとつながっていった。
「誰もがヒガシが勝つと思っていたと思うけど、対戦が決まった時から、自分たちだけは目黒が勝つと信じて準備をしてきました。今日の試合は準備してきたことが100%出せた結果だと思います」とキャプテンの石掛は胸を張った。
次におこなわれていた試合の勝者が2回戦の相手。天理が四日市工業に大きくリードしているのを横目に見ながら、竹内監督は「こうなったら伝統校対決で、みなさんに古豪対決を楽しんでいただければ」と笑顔を見せた。
敗れた東福岡は、風上の前半に大きくリードを奪えなかったのが響いた。また、1年生8人が先発、プレッシャーを受けた場面で浮き足立つなど経験不足が露呈。ピンチの場面でチームをまとめるリーダーもおらず、目黒の勢いに飲まれてしまった。夏に向けて課題が浮き彫りとなる選抜初戦となった。