ラグビーリパブリック

長髪編み込む森川由起乙 サンゴリアスに感じる団結力

2024.03.21

日本代表キャップを持つ森川由起乙。機動力もあるプロップ(撮影:松本かおり)


 日本で生まれ育ったトップレベルの現役ラグビーマンで、このヘアスタイルでフィールドに立つのは森川由起乙ただひとりだろう。

 コーンロウ。いくつかのかたまりにわけた髪を頭皮から細かく編み込む形で、仕上がりのトウモロコシ状に見えることからそう名付けられたと言われる。ダンス、ブラックミュージックの世界でよく見られそうなデザインだ。

 東京サントリーサンゴリアス所属の31歳は、2021年に社員から専業のプロへ転じていた。それ以来、髪や髭を自由に伸ばしやすくなっており、22年発足のリーグワンでも身長180センチ、体重113キロの大きなシルエットをさらにヴィヴィッドなものにしていた。そして今季は、より大胆な変更を図った。

 一時はちょんまげのように束ねようとも考えたが、それでは押し合い、ぶつかり合いで潰れたトップの毛先が自分の顔に当たりそうだった。検討の末、現在の形に辿り着いた。

 代官山の美容室のSNSへ自らダイレクトメッセージを送って以来、週に一度のペースで作り直してもらう。時間が経つとほどけやすくなるため、メンテナンスが欠かせない。

きれいに編み込まれた森川由起乙のコーンロウ(撮影:向風見也)

 3月21日にリザーブに登録が発表された23日の試合を前に、再びサロンへ足を運ぶ。手直しを加える。

 東京・秩父宮ラグビー場での第11節の、ニッチな見どころのひとつだ。

「いやぁ、おもしろかったです。久しぶりに、アドレナリンが出ました」

 当の本人がこう語ったのは、豊田スタジアムでの第10節に後半から出た数日後。敵地でトヨタヴェルブリッツに多くの時間帯でリードを許しながら、自軍キックオフから始まるラストワンプレーを機に逆転。39-38と辛勝していた。

 持ち場の左PRでスクラム、タックルに奮闘の森川は、現在12チーム中3位のクラブにまとまりを感じている。

「(週末の公式戦に向けた)1週間ごとのテーマに関して全員が準備して、それを(実戦で)出せるゲームが増えてきています。ひとりで頑張っているのではなく、皆で問題解決し、よくしていって…。最近は(終盤戦とあり)メンバーが固定されてきましたが、ジャージィに届いていない選手も練習で(レギュラー格の)僕らが困惑するくらいのプレッシャーをかけてくれている。サンゴリアスのスコッドで、戦えている」

 自身のパフォーマンスにも手応えをつかむ。スタッフの尽力もあり、約3年前から慢性的に抱えていた膝の痛みを解消。おかげで思い切り戦えるという。

「今年のシーズンインくらいまで苦しんでいたのですが、周りの人のおかげでいいサイクルができて、不安がなくなった」
 
 次なる相手の横浜キヤノンイーグルスには、「まだ使っていないサインプレーなど、いろんなことを仕掛けてくる」と警戒する。

 現在5位の敵軍を率いる沢木敬介監督は、知恵と執念を有して選手とスタッフの心に火をつけたがる名物指導者だ。2016年からの3季サンゴリアスを率い、就任1年目から当時のトップリーグで2連覇している。

 今度の敵将の印象を聞かれ、2015年入部のこの人は「…僕は、あまり好かれていなかったと思います」としつつ「あの人自身に強い軸がある。かつ、それにとどまらない」と続けた。

 サンゴリアスが最後に優勝した当時について抱く感情は、それぞれの当事者により異なる。

 2022年に日本代表で2キャップを得た森川は、今度のイーグルス戦へ改めて言葉を選ぶ。相手SOの田村優の名を挙げ、こう展望する。

「優さんを起点に、強いFW、強いWTBをキーに『(独自の)型』で攻めてくる。僕らがその『型』を先に潰すことで、イーグルスはパニックに陥る。『型』を決めさせないために前半から集中し、先制パンチを打つ。最初からパンチを打つ準備をする」

 試合後は仲間と居酒屋や焼肉屋へ出かけるのが好き。営業社員でなくなったいまもサントリー製品を飲む。

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