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ブレイブルーパスなぜ強い? 徳永祥尭が感じた「レベル」の高まり。

2024.03.20

けがを克服して戦列復帰し、リーグ後半の戦いに燃える徳永祥尭(撮影:松本かおり)


 まだまだこんなものではない。東芝ブレイブルーパス東京の徳永祥尭は言う。

「自分のなかにはいいプレーは残っていなくて、悪いプレーが残る。よかったと言ってもらえたプレーは見直して、何が原因でそれができたのかを振り返りたいです」

 話をしたのは3月17日。東京・秩父宮ラグビー場で、加盟するリーグワン1部の第10節を終えてからだ。

 持ち場のFLで先発し、前に出ながらのタックル、得点をもたらすランを披露。対する三菱重工相模原ダイナボアーズを41-19で下した。しかし、自己評価は低い。

 昨季のけがからおよそ10カ月を経て復帰して2つめにあたるこの試合は、後半26分で交代。本来のパフォーマンスからは程遠いと言いたげだ。防御時の接点での皮膚感覚を明かす。
 
「自分の感覚で『もうひとつ速く働きかけられていたら、ジャッカル、獲れたな』と。ブレイクダウンでの判断周り。ここはよくしていきたい」

 身長185センチ、体重100キロの31歳で、日本代表15キャップ(代表戦出場数)を持つ。

 2019年のワールドカップ日本大会に登録された際は、出番こそなかったものの試合中の給水係としての働きが注目された。同国史上初の決勝トーナメント進出までの過程で、当時の代表主将ブレイブルーパス同僚でもあるリーチ マイケルにこう感謝された。

「(緊張感のある本番でも)落ち着いている。興奮しない。賢い人。彼がウォーターボーイでよかったです」

 2015年度加入のブレイブルーパスでは、前年度まで4シーズン、共同主将を務めた。トッド・ブラックアダー体制が発足すると同時に、小川高廣とともに船頭役を担ったのだ。

 古豪復活へ着実に歩を進める。リーグワン元年にあたる一昨季は、国内4強に並んだ。自身のルーキーイヤーに準優勝して以来のことだ。現在は約15年ぶりの開幕8連勝を記録するなど好調だ。

 しばらく雌伏の時を過ごした年長者は、現在のクラブをどう見ているのだろうか。その問いに「誰が出てもハードワークする文化が根付いてきている」と語り、ダイナボアーズ戦で最後に奪ったトライについて語る。

 後半ロスタイムの1本は、ペナルティキックからNO8のシャノン・フリゼルが速攻を仕掛けてSOのリッチー・モウンガにつなぎ、ここからLOのPJ・スティーンカンプ、FLのアサエリ・ラウシーと、初戦でメンバー外だったリザーブ勢が順にサポートして決めたものだ。徳永はこうだ。

「開幕と比べるとメンバーが変わりましたが、特にインパクトプレーヤーがボールをもらおう、もらおうとしている。チームの雰囲気を上げてくれます」

 ジャージィを着た選手が順に爪痕を残す裏には、激しい部内競争がある。週末のゲームに向けて対戦相手の模倣をする「K9」に触れ、主将経験者はこうも続ける。

「K9のおかげで、(試合中に)プレッシャー下でキルを遂行できている。お互いに『やり合おう』という雰囲気がある。今週、FWのモールの練習で(主力組は)1トライしか獲れなかった。K9に抑えられたんです。それくらい激しくしてくれる。気を抜いたら、全然、やられます。チーム全体でレベルが上がっています」

 今季はフリゼル、モウンガといった昨秋のワールドカップ・フランス大会でニュージーランド代表だった2人が加わっている。

 徳永は「もちろんあの2人の存在は大きい。特にリッチーは何人もいるんじゃないかというくらい後ろ(のスペースを)カバーしてくれる」と頷いたうえで、「それ以外の選手の活躍も大きい」。大駒の仲間入りが好影響を及ぼしているのは、獲得が決まる前からの積み上げがあったからだと強調する。

「(2人の加入で)ピースがはまって、いままで頑張ってきたところがかみ合い始めた。特にリッチーは周りを使うのが上手。『いままでやってきたことが正しかった!』じゃないですけど、(以前と)同じようにやれば、ゲイン(さらに突破)できるという感じです」

 森田佳寿コーチングコーディネーター、さらには現在ダイナボアーズにいるジョー・マドック元アシスタントコーチらが段階的に落とし込んだ攻めの仕組みを、実力者が首尾よく運用しているのが現在のブレイブルーパス。その隊列にあって、長年の看板選手も緊張感を保つ。

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