松島幸太朗の厳しさが増しているようだ。
国内リーグワン1部へ参戦中の東京サントリーサンゴリアスでは、普段のトレーニングからプレーの細部に目を光らせる。
「やっぱり、ラインブレイクはされている。ディフェンスで、疲れた時こそコミュニケーションを取らないと」
府中市内の本拠地で話したのは3月5日。東京・秩父宮ラグビー場でリコーブラックラムズ東京を62-0で制した3日後のことだ。
最後尾のFBで先発の自身はその日、16、67分のトライシーンなどで好走を連発。自陣から敵陣22メートルエリアの空間をえぐるキックを放ち、「50:22」に成功することもあった(タッチラインの外へ出た地点から自軍ボール再開)。
チームも接点の質を保ちながら大外への展開で加点。内容に満足する声が現場からも聞かれるなか、31歳の主軸は、改善点を見出していたのだ。
サンゴリアスには2014年に加わり、17年度には当時のトップリーグで2季連続5度目の優勝に喜んでいる。
しかし、その後は頂点から遠ざかっている。22年までの約2年間フランスにいた松島は、「(サンゴリアスを)優勝できるチームにする」ことを目指してお目付け役を買って出る。
NO8の箸本龍雅によると、「練習の終盤に軽いミスがあった時には『そのひとつが、勝敗をわけるから』と厳しく」。他者にだめを出すのはエネルギーがいりそうだが、本人はこともなげに言う。
「(パフォーマンスが)よくなければ、言うようにしています。そのままプレーしても同じミスを繰り返し、成長できない。それを止めれば、自分たちの成長につながる。…まぁ、僕は毎回、言うわけではない。ただ、うまくいっていない時こそ厳しく、自分たちが何をしなきゃいけないかを再確認します」
中断期間中に臨んだ「クロスボーダーラグビー2024」でニュージーランドのブルーズに7-43で負けてから、クラブはシリアスなミーティングを実施。部員がランダムに4つのグループにわかれ、ブルーズ戦の映像クリップを見つめて互いを指摘し合った。
以後の練習では、松島はもちろんコーチ陣も個々の動きをシビアにチェックする。就任2年目の田中澄憲監督が、考えを明かす。
「コーチから指摘されるより、選手同士で言い合える関係性になっていくことが大切です」
指揮官が求める空気を作り出すひとりが、昨秋までワールドカップに過去3度出場の松島なのだ。
今季はコンディションが上向き。直近のワールドカップ期間中に満足にできなかった体幹や筋力のトレーニングに注力し、昨年に実施のアレルギー検査を経て白米、小麦、卵を控えていることをパフォーマンスにつなげる。
秩父宮に花園近鉄ライナーズを迎えるレギュラーシーズン第9節を9日に控え、こうも続ける。
「自分たちのよかったところを継続し、悪かったところを改善する。リーグワンには楽な試合はない。最初からいいインテンシティ(強度)で行かないと。自分たちでコントロールできるような試合展開にしたいです」
今度の週末も疾走する。