後半9分には自らトライも奪った。
伝統の一戦、オックスフォード大とケンブリッジ大が戦うヴァーシティーマッチで土佐誠が活躍、勝利に貢献した。
3月2日、舞台はサラセンズ(英・プレミアシップ)のホームグラウンド、ストーンX(エックス)スタジアム。
56-11とケンブリッジ大が快勝した試合は、142回目の歴史の中で最大得点差の80分となった。
土佐はケンブリッジ大の8番として出場し、フル出場を果たした。
2009年、オックスフォード大でヴァーシティーマッチに出場した時は途中出場。15年前の一戦では27-31と敗れており、今回が初めての勝利となった。
ケンブリッジ大はU20イングランド代表の経験があるSOジェイミー・ベンソンが攻撃的な姿勢を示し、前半を30-6と大きくリードして終えた。
ベンソンは1T5G2PGで21得点の活躍だった。
チームは前後半で合計8トライを奪った。
7人制スコットランド代表のジェームズ・ファーンデールのランニングもチームにモメンタムを与えた。
土佐が奪った後半9分のトライは、相手陣深い位置、右サイドでのスクラムから生まれた。
ライトブルーの横縞ジャージーの8番はタイミングよく右へ飛び出し、絶妙なコースを走った。
相手のタックルを受けながらトライラインを越えた。
この日、スクラムはオックスフォード大が有利に立っていた。土佐は、その状況を読んで動いた。
「相手ルースヘッド(PR)の影響(元ワラビーズ/トム・ロバートソン)を受けてスクラムが劣勢だったので、HOのキャプテンに『ダイレクトフッキングでいかせてくれ』とスクラムの直前にコミュニケーションを取りました。それがうまくいきました」
エグゼクティブMBA(経営学修士)取得を目指してケンブリッジ大学ジャッジビジネススクールに学びながら、同大学のラグビー部に所属している37歳は落ち着いていた。
「15年前は(試合会場が)トゥイッケナムで、試合前の多くの伝統(的行事)や報道に敏感になり、とても緊張しましたし、ピッチに立てるかどうかも分からずに少し不安でした」と話す。
しかし15年の歳月の中で、ラグビーと人生の経験を積み重ねてきた。
「長い日本でのキャリアを活かし、今回は落ち着いて臨めました」と自身の歩みを振り返る。
試合後は大勝の喜びもあり、「みんなプレッシャーから解放されて大騒ぎしていました」という。
「(出場メンバーの)ほとんどが学部生なので、若いエネルギーを感じました」
宴は日をまたぎ、翌日の昼まで続いた。
試合直後、スタジアムでの集合写真などのシーンで土佐の姿を見つけるのは難しかった。
なぜか。
「元オックスフォードなので、旧友に敬意を払うつもりでした。シャンパンセレブレーションや主将が勝利のカップを持ち上げるシーンではみんなの後ろに隠れて静かにしていました。(それでも)あとからオックスフォード大の旧友たちにちくりと言われました」
この日の対戦により、両校の通算対戦成績(142戦)はケンブリッジ大の66勝、オックスフォード大の62勝、14引き分けとなった。
また、男子の前におこなわれた女子の試合も10-5でケンブリッジ大が勝った。