開幕7連勝を決める一戦では、試合の途中からゲーム主将を託された。
船頭役のリーチ マイケルがけがで退いたからだ。緊急事態。しかし、東芝ブレイブルーパス東京の原田衛副将は落ち着いていた。新しく加わったニュージーランド代表の司令塔の名を挙げ、このように言った。
「僕が言わなくても、リッチー・モウンガなどがリードしてくれるので、負担はないです」
2月24日、東京・秩父宮ラグビー場でのリーグワン1部・第7節。昨季は自軍より2つ上の3位だった横浜キヤノンイーグルスを、27-7で制した。
スクラム最前列中央のHOで先発の原田は、この日も得意のコンタクトシーンで奮闘した。言葉よりも身体で組織を引っ張る。
15点リードを奪った直後の前半30分頃、自陣10メートル線付近での防御局面へ何度も顔を出した。2フェーズ連続でジャッカルを試み、その次の、次の局面でロータックルを決めた。その地点で、近くにいた味方のジェイコブ・ピアスが球をもぎ取った。攻守逆転。殊勲の原田は謙虚に締めた。
「ジェイコブはボールに絡むのがうまいので、そこはすごいなと。僕はなんもしてないです」
身長175センチ、101キロの24歳。地元の兵庫にある伊丹ラグビースクールで楕円球と出会い、神奈川の桐蔭学園高へ越境入学。9月入試を利して2018年に入部の慶大では主将を任され、ブレイブルーパスでは実質1季目の22年度からレギュラーに定着した。
今季はレギュラーシーズンの中断期間中、目標への第一歩を踏んだ。
日本代表のトレーニングスコッドに名を連ね、2月6日から2日間ある福岡合宿へ参加。9年ぶりに再登板のエディー・ジョーンズ ヘッドコーチのもと、「超速ラグビー」という方針に沿って汗を流した。
ジョーンズは在学中だった慶大へ指導に訪れたことがあるため、原田にとっては今回が初対面ではなかった。
「(選出は)率直に嬉しかった。ただ(代表入りが)決まったとは思ってないので、(リーグワンで)しっかりアピールしないといけない。せっかくエディーさんのコンセプトがわかってきたので、それを持ち帰る。スピードを心掛ける。ボールキャリー(突進役として)の(パスの)もらい方は、結構、見られていると思うので、そこは意識したいです」
ナショナルチームは6月22日、大一番を控える。
東京・国立競技場で、ワールドカップ・フランス大会3位のイングランド代表を迎える。同国にプール戦で敗れた日本代表にとっては、リベンジの機会を得た格好だ。2027年のワールドカップ・オーストラリア大会に向け、舟をこぎ出す。
かねて原田は、代表入りではなく代表として強豪国を倒すのを狙ってきた。こう展望する。
「6月22日のイングランド代表戦、出たいと思います。エディーは言っていましたが、勝てるチャンスはある。その可能性を閉ざさず、信じて練習したいです。その頃(2027年)には、ある程度のキャップ(代表戦出場数)を持っている状態で臨みたいので、今年から、やっていきます」
そのための勝負は、もう始まっている。クラブにとって2009年度以来の日本一を目指しながら、ジョーンズ体制の「全員が走らないといけない感じのラグビー」へアジャストできるとアピールする。
3月2日は東大阪市花園ラグビー場で、花園近鉄ライナーズとの第8節に出場予定。キックオフからゲーム主将を務める。