ゆっくりと時間が流れる国で多忙な日々を送っている。
池田韻(ひびき)レフリーはフィジーに到着してからの日々を振り返り「早かったですね。(滞在予定期間の)もう半分以上経ったのか、という感じです」と話す。
1月9日に始まったレフリー研修期間は4月2日まで続く。
セブンズの大会が金曜と土曜におこなわれることもあれば、15人制の試合で笛を吹くこともある。
月曜から金曜は語学学校に通う。レフリー仲間との練習会にも週に2回か3回参加している。
活動は現地紙『FIJI TIMES』でも大きなスペースを割いて紹介された。
『NAHEHEVIA Valley 7s』(2月9日、10日)開催時に取材を受け、「フィジーの選手たちのスピードとスキルは驚くべきもので、オフロードとユニークなラグビースタイルは特に印象的です」とピッチ上の印象を話した。
「本当に素晴らしい経験ができています。また、フィジーに来て文化を知ることは、私が日本にいるときから夢見ていたことです」と感謝の気持ちも伝えている。
記事は、池田レフリーがフレンドリーなフィジーの人々に受け入れられ、地域社会にとけ込んでいることも報じた。
フィジーでの生活にもすっかり慣れた。和食は恋しいけれど、毎日を楽しく過ごしている。
渡航前に知人からもらったインスタントみそ汁をたまに食べると、最高に旨い。
現地のものも口に合う。
よく食べるのはキャッサバ。「繊維質が多いお芋みたいです」。
大会の最中、担当試合の間にレフリーに提供されるスープもおいしく食べた。
英語を使ってのコミュニケーション能力は上達中だ。
学校で学んだことを、ラグビーの仲間との会話などですぐに試すことができる環境がいい。
本人は「まだまだ」と言う。
例えば試合中。セブンズでは短い声掛けや会話でゲームが進んでいくけれど、15人制のときは選手との会話も長くなる。
そういうケースでも説明できるスピーキング能力をもっと高めたい。
毎週土曜日は、レフリーを務める機会に恵まれている。
ただ担当試合や大会の予定が届くタイミングが、日本と比べるととても遅い。
急な準備や移動にも慣れてきた。
前日に明日の午前3時出発で大会開催地へ行くぞ、と連絡が来ることもある。
午前5時に到着し、数時間後にキックオフ。そんなケースもあった。タフさも求められる。
おおらかな国民性。他にも日本と違うことはたくさんある。
レフリーが集まっての練習会は学校のグラウンドや海岸でおこなわれ、若い世代もいる。13歳のレフリー志望者とも会った。
試合後にレフリーコーチから指導を受ける。映像チェック後のフィードバックなどではなく、見たままの指摘を伝えられる。
コーチは自身の判断との相違点を挙げるとともに、ランニングコースや走力などを褒めてくれる。
バス乗り場には時刻表がない。
また、7時の出発予定となっている場合でも、10分前に出発したり、遅れたり。そんなことには、もう慣れた。
おおらかに生きるフィジーの人たちは、ラグビー愛にあふれている。『FIJIBITTER SEVENS SERIES』として各地でセブンズ大会が開かれ、スタジアムには多くの旗幕が飾られる。そこには「WE LIVE FOR RUGBY」の文字がある。
2月16日、17日にナンディで開催された『NAWAKA 7s』には日本から遠征してきたサムライセブンも出場していた。
16日は、同チームの代表兼監督を務める吉田義人氏の誕生日。会場では、そのことを知らせるアナウンスが流れた。
世界を相手に快足を飛ばし、多くのトライを奪ったキャリアを持つ氏へのリスペクトからだろうか。
大会では女子セブンズ代表の試合の担当をすることもある。
日本にいる時から頭に描いていたフィジーでの日々が現実のものとなっている。
残り1か月ちょっと。多くのスケジュールが入っている。
3月21日〜23日はスバに向かう予定だ。『MARIST 7s』が開催される。
スーパーラグビー・パシフィックのフィジアン・ドゥルアの試合も観戦に行きたい。人気のある水上レストラン&バー、『CLOUD9』(クラウドナイン)を訪れることはできるかな。
ラグビーのことも、フィジーのことも、もっともっと詰め込んで日本に戻りたい。