ラグビーリパブリック

「われわれは勝利を受け取る権利がある」。ダイナボアーズ、超ハードトレで得たもの。

2024.02.26

開幕戦以来の復帰戦となったHO安江祥光。首を負傷していたが、「いろんなアプローチをメディカルの方にやってもらった。トレーナーと一緒に掴んだ勝利」と感謝した ©JRLO

 昨季の上位4チームが参戦したクロスボーダーラグビーが終了。リーグワン・ディビジョン1のリーグ戦が再開されている。

 第7節で唯一それまでの順位通りに勝敗がつかなかったのは、静岡ブルーレヴズと三菱重工相模原ダイナボアーズの一戦だ。
 藤井雄一郎監督を迎え6節終了時点で5位と好調だったレヴズを、同9位のダイナボアーズが53-45の乱打戦の末に破った。

 クロスボーダーを戦った4チーム以外は、クロスボーダー開催中の1か月間が、後半戦に向けてチーム力を向上させる大事な時間だった。6試合戦って2勝4敗と苦しんでいたダイナボアーズの指揮官は、中断期間前に宣言していた。

「選手が嫌というまで、ハードな練習をし続けます」

 そのグレン・ディレーニーHCは勝利の会見後、笑顔で振り返った。
「おそらく、自分が(2021年に)相模原に来てから一番ハードな練習をしました。それを今日、パフォーマンスで見せられたと思います」

 ハードワークで掴んだ勝利だった。試合はディフェンスを看板とする両チームが14トライ98得点を叩き出す打ち合いに。ディレーニーHCが「ボクシングで12ラウンド戦ったくらいタフ」と表現する激戦で、ダイナボアーズは終盤のもっともきつい時間帯に抜け出した。

 後半24分の失トライで43-38と迫られる中、ダイナボアーズは敵陣でミスなく14フェイズを重ねた。一度はWTB小泉怜史がインゴールを陥れるも、TMO判定でノックオンに。しかし、再び10フェイズの連続攻撃で最後はWTBベン・ポルトリッジが抜け出した(30分)。

 その直後にはブルーレヴズ最大の強みであるスクラムで2度の反則を誘い、3点を追加(SOジェームス・グレイソンのPG)。残り3分で15点のリードを奪って大勢を決めた。

 この日は、粘り強いアタックが光った。
 SH岩村昂太主将が「われわれのDNAを前面に出せた」と振り返った前半最後のトライシーンがその象徴。5分近く攻め続け、29フェイズの末に取り切った。風下の前半を同点(26-26)で折り返せた、大きなトライだった。

 グラッグスの愛称で選手たちから慕われる、ディレーニーHCは言う。
「(中断期間は)フィジカルだけでなく、メンタルにすごくプレッシャーをかけました。暗いところ(雰囲気)までチームを持っていった。この経験をしたからこそ、プレッシャーがかかったときに、良い判断ができていたと思います」

 ボールゲーム要素を持たせながら、走り続けて心身に負荷をかける。そんな過酷なトレーニングのテーマが、「限界を突破する。その中でどれだけ考えられるか」(岩村主将)だった。

 チーム最年長の39歳で、長年このチームのリーダーを担うHO安江祥光は、その成果を補足する。
「しんどい状態でも頭がクリアになる。そうすると相手のウィークポイントが見える。いろんなオプションが使えるようになります」

「17年のキャリアの中で一番きつかった」と笑う安江は、プレーヤーながら指揮官のコーチング力に感心する。

「(ディレーニーHCは)すごく人を見て、タイミングを見てる。ピープルマネジメントがすごくうまいです。例えば、目標タイムを言ってしまうと、そこにコミットするように人間は走ってしまうけど、グラッグスは限界を見させない。どう(各選手を)オールアウトさせるかすごく考えています。
 それから、『これだけのハードワークをやってきたのだから、われわれは勝利という対価を得なければいけない、受け取る権利がある』というマインドセットを選手たちに作らせるのがうまい。そのメンタルがあれば、どんなにしんどい時でもブレないですよね」

 昨季は序盤戦に旋風を起こした猪軍団。今季は後半戦に混戦のディビジョン1をかき乱す存在になれるか。

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