開幕からの全6戦にすべて先発。WTBで4試合、FBで2試合プレーし、プレータイムは480分ある。
つまり今季のコベルコ神戸スティーラーズの試合で、この人の姿がなかったことはない。
松永貫汰が今季好調だ。
昨シーズンを通して積み上げたプレータイムをすでに大きく超えている。
167センチ、78キロと小柄も、ラインブレイクを繰り返し、チームを前に出した。
2月25日におこなわれるリコーブラックラムズ戦にも11番で先発する。
静岡ブルーレヴズを30-26と破った第2節の試合では、後半33分に逆転トライを奪ってプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれた。
値千金の5点は、ラックサイドを抜け出したSH日和佐篤に好反応し、サポートから奪ったものだった。
そのトライにも代表されるように、今季の松永の活躍を支えているのはハードワークだ。
意識高く動き続けているから結果が出ている。
好調さの要因を、「今季からヘッドコーチが新しくなり(デイヴ・レニーHC)、そのポジションでの役割が去年よりはっきりしています」と自己分析する。
「なので、自分がやるべき役割を自信持って遂行できるようになりました。また、どうやったらボールタッチを増やせるか考えながらプレーしている結果だと思います」
ハードワークは、今季のチームの武器にもなっている。
全員で相手より動くことで生まれるスペース。綻びを突く。松永らバックスリーがカウンターアタックを強みにできている理由のひとつだ。
「アタック時、SOやインサイドCTBのサポートをしてオプションになり続けるようにしています」
ディフェンスでは外から内へ情報を伝える。その結果、自身が余裕を持って判断し、動けることにもつながる。
パフォーマンスと意識の変化を評価され、2月上旬におこなわれた日本代表トレーニングスコッドの合宿にも招集された。
エディー・ジョーンズHCがリードするセッションに触れ、ハードワークが芯にあると感じた。
自分が注力してきたことと重なる。方向性は間違っていなかった。
同HCの掲げる『超速』も、自分に合っている。
「(スティーラーズで)試合に出ることだけを考えた結果、選ばれました」と笑顔を見せる。
日本代表は常に頭の中に入れてきた目標。「それに近づけて嬉しい」と素直な言葉を口にした。
国内でも小さいと言われる体躯は、インターナショナルの舞台を目指すとなれば、さらに際立つかもしれない。
しかし、大事なのは「自分の強みを常に出すこと」だ。
スティーラーズでも強みを出す準備を重ねた結果、好パフォーマンスを出せるようになった。
試行錯誤を重ねた結果見つけた、自分の生きる道だ。
小柄な若者たちへの金言を口にする。
「小さい選手には小さいなりのスピードや俊敏性など、自分の強みがあると思います。そこにフォーカスしてほしいと思います」
大きい人に負けないように、体重や、ウエートトレで筋肉の量を増やしたくなるだろう。
その気持ちは分かる。しかし、「自分がいちばんいいパフォーマンスができる体重を知り、コントロールすることが大事です」と言う。
「その上で、なおかつスピードトレーニングをしたり、自分の得意なプレーができるような体作りをしていくのがいいと思います」
自分もそうやって安定感あるプレーヤーに近づいている。
ジョーンズ監督に「兄弟もいるよね。ふたりともスピードがあっていいよ」と話しかけられた。
今季開幕から7連勝と好調な東芝ブレイブルーパス東京に所属する松永拓朗(FB/SO)も、存在感をアピールする試合を重ねている。
兄弟揃って国際舞台に立てたなら、喜んでくれる人たちがたくさんいる。