フランス国民の期待に応え、自国開催の大舞台で金メダルに輝くチャンスはまだ残っている。
2021年のワールドラグビー男子15人制最優秀選手で、フランス代表としてテストマッチ52試合に出場してきた世界最高スクラムハーフのアントワンヌ・デュポンが、新たな挑戦への第一歩を踏み出した。
昨年の自国開催ワールドカップでは主将としてフランス代表をけん引し悲願の初優勝を狙ったが、準々決勝で南アフリカ代表との死闘に敗れ、涙をのんだ。それでも、27歳のデュポンには発憤興起するものがあった。今年夏にパリで開催されるオリンピックを目指し、金メダルを獲得したい。そのために、7人制ラグビー(セブンズ)に挑戦することを昨年11月に表明していた。
同じ楕円球競技だが異質のゲームであり、セブンズを学ぶため、今年は15人制の欧州6カ国対抗戦であるシックスネーションズは欠場し、1月から7人制代表候補のトレーニングに参加していた。15人制の責務もあり2月3日までは所属するトゥールーズの試合に出ていたが、その後は本格的に切り替え、ワールドセブンズシリーズ(HSBC SVNS 2024)第4ラウンドのカナダ・バンクーバー大会でスコッド入り。現地時間2月23日におこなわれたプールステージのアメリカ戦でセブンズデビューを果たした。
背番号25をつけたデュポンはベンチスタートとなり、12点リードだった後半4分から出場。プレータイムが少なく、巧みなスキルで魅せたパスがスローフォワードと判定された微妙なシーンもあったが、ブレイクダウンでアグレッシブに働きかけるなど、勝利に貢献した。
デュポンの挑戦は始まったばかりだ。
ただし、15人制から7人制への移行は簡単ではないと言われている。
7人制の国際舞台で活躍したあと、15人制の代表になって世界一に輝いた南アフリカのクワッガ・スミス(静岡ブルーレヴズ)やチェスリン・コルビ(東京サントリーサンゴリアス)、同じく7人制代表デビューが先だったニュージーランドのリーコ・イオアネ、そして、セブンズが国技と言われるフィジー出身でオリンピック金メダリストとなり昨年のワールドカップにも出場したチョスア・トゥイソヴァやセミ・ランドランドラなどは両方で成功した選手と言えるが、15人制のスーパースターだったブライアン・ハバナ(南アフリカ)やソニービル・ウィリアムズ(ニュージーランド)、クウェイド・クーパー(オーストラリア)などは7人制に挑戦したものの多くの人が期待していたほど大きな影響を与えることはできなかった。
なお、デュポンと同じくパリオリンピックを目指すもうひとりのビッグネーム、ワラビーズ(15人制オーストラリア代表)主将として歴代最多出場の記録を持つ32歳のマイケル・フーパ―も7人制に挑戦中だが、ふくらはぎとアキレス腱を負傷した影響もあり、デビューは遅れている。
パリオリンピックの7人制ラグビーは7月下旬に開催予定。その前に、ワールドセブンズシリーズはバンクーバー大会を含め、あと5ラウンドある。