ひと桁の背番号を背負ったのは今季1試合だけ。2月24日の横浜キヤノンイーグルス戦でも20番を背負う。
それでも伊藤鐘平は、開幕から6連勝と好調の東芝ブレイブルーパス東京を支える力となっている。
ここまで途中出場がほとんど。インパクトプレーヤー、フィニッシャ—としてチームへの貢献度は高い。
その証拠に、伊藤は2月上旬に福岡で実施された日本代表トレーニングスコッド合宿に招集された。
エディー・ジョーンズ ヘッドコーチとの面談では、フィジカリティの高いプレーを評価していると伝えられた。
自分自身でも、限られた時間の中でインパクトの強いプレーを出せている手応えはあった。
ただ、代表トレーニングスコッドに呼ばれるとは思っていなかった。
U20代表の経験はある。しかし、このカテゴリーに選出されるのは初めてだ。
「やっとスタートラインに立てたかな、という感じです。幅の広いスコッドですが、その中に自分の名前があった時はすごく嬉しかった」
「よく見ていてくれる」と、リーグワンの試合に足繁く通うHCに感謝する。
兄・鐘史(現三重ホンダヒートFWコーチ)からも、「よく見てくれる人」のエディー評は聞いていた。
だから、「(合宿時には)グラウンドでもミーティングでもアピールした方がいいとアドバイスを受けた」
鐘史さんは2015年ワールドカップを、ジョーンズHCとともに戦った人。世界的指導者のいろんな顔を知っている。
福岡合宿での2回のセッション後、「すごく身になるものでした」と話した。HCが求めるものを「ずっと走り続けること」と理解した。
「そこは自分の課題でもある。リーグ戦で学んだことを続けて、自分のプレーの引き出しを増やしていきたいと思っています」
190センチ、105キロ。札幌山の手高校から京産大を経て、2020年からブレイブルーパスに加わった。
学生時代、府中にやってきてからもLOでプレーすることがほとんどだった。
しかしトッド・ブラックアダーHCの進言があり、昨季からFLでプレーすることが増えた。
「LOもバックローもプレーできるのが(自分の)強み。どちらのポジションでも常に力を出せるプレーヤーにならないと」
ジョーンズHCにも評価されているコリジョンの強さは、昨年から5キロほど増量した肉体改造も理由のひとつだ。
「強さが増しました。でも、ワークレートは落ちていません」
自信がみなぎる。
ジョーンズHCもそこを認めているのだが注文も出た。
「評価してもらい、自分のプレーに間違いはないと自信になりましたが、エディーさんにボールキャリーもタックルも、もっと見たいと言われました」
その言葉を聞き、再開するリーグワンでのモチベーションはさらに高まっている。
好調なチームのバックロー争いは熾烈だ。
リーチ マイケル主将やオールブラックスのシャノン・フリゼルなど、ワールドクラスの選手たちが並ぶ。
そこにいるだけで成長できそうな環境も、自分から学びにいく姿勢も忘れない。
フリゼルにもボールキャリーについて教わった。
「激しくプレーしているだけではない。フットワークを使う意識を持って、と」
なのに、試合になるとつい忘れ、「バーッといってしまう」と豪快に笑う。
エディーは、よく見ている。力強さに細かなテクニックも加われば、評価はまた高まる。