パリ五輪開幕まで半年を切る中、26歳のボールキャリアーがサクラセブンズで存在感を増している。
北海道バーバリアンズディアナ所属の三枝千晃(さえぐさ・ちあき)だ。
167㌢、68㌔の体躯でポジションは右PR。普段はおしとやかな性格も、グラウンドに立てば迷わず縦に突っ込む。パワフルに走る。
サクラセブンズで主将経験もある中村知春は、ケガから復帰した松田凜日と並んで絶賛する。
「ワールドレベルのFWです。高さ、パワー、瞬発力、セットプレー…。そこがいままでのサクラセブンズには足りていなかったところなので、とてもありがたい(存在)です」
砲丸投げの選手だった小山台高でラグビーを始め、文教大進学を機にアルカス熊谷に加入した。キャンパスのあった越谷と、熊谷の距離感を見誤ったとは良い思い出だ。
「キャンパスが埼玉だったので、埼玉にあるチームを探しました。でも行くのに2時間かかるのは想定外で。東京のチームの方が近かった」と笑う。
「(時間的に)出られない練習もあったので、出られる時にどれだけ頑張れるかでした」
大学卒業と同時に北海道バーバリアンズディアナへ移籍。ここで、いまの強みが培われた。
「雪でこの時期はグラウンドでの練習ができません。その分、ウエートの回数は他のチームよりも多いです。そのおかげでフィジカルが強くなりました」
加入直後はリハビリ中だったことも相まって、「ずっとウエートをしていた」。コンタクトの強さが認められ、代表の扉が開いたのは3年目の2021年だ。
東京五輪後のワールドカップ予選(アジアシリーズ・ドバイ大会)で初キャップ。翌年のワールドカップセブンズも経験し、セブンズシリーズで世界を転戦した(18キャップ)。
お気に入りの遠征地は、即答で「シドニー」。ホテルの目の前に海が広がっていて、オフの日には仲間と海水浴を楽しめた。
「世界をまわれることは当たり前ではないですし、自分ひとりが頑張ってもできない特別なこと。選んでいたただいていることに感謝して、プレーで期待に応えたいと思っています」
初出場が懸かるパリ五輪に向けては、「近づいてきているのは感じるけど、大きな気持ちの変化はない」という。
「(ただ、五輪は)憧れの舞台です。アルカスにいた時に、チームメイトがオリンピック出ていて、かっこいい、目指したいと思いました」
接点でアピールしたい。練習中でも、試合でも、そこで負けたくない。
「ボールを持ったらとにかく前に出る。コンタクトした時に何人も巻き込んでいきたいと思っています。ただ当たるのではなく、ズラして当たったり、ジャッカルであればしっかり引き込んで絡むとか、接点のスキルをもっと上げたい」
昨季はセブンズシリーズのトゥールーズ大会で5位、最終順位でも8位と、いずれも過去最高位を更新していたサクラセブンズ。
しかし今季は、メンバーを入れ替えながらの戦いではあるが、ここまで9位、10位、11位と順位を落としている。
三枝は、自らにベクトルを向ける。
「接点で負けて流れを持って来られない試合が多かった。(改善して)上の順位にいきたいです」
2月23日からは4戦目が始まる。バンクーバーでは暴れたい。