大きな体に可能性と期待が詰まっている。
187センチ、116キロ。茂原隆由(もはら・たかよし)は、静岡ブルーレヴズのフロントローだ。
2022年の春、中央大学からチームに加わった。
昨季は10試合に出場し、先発は1試合だけ。高校時代から慣れ親しんだ右プロップの位置で相手と組み合った。
しかし、今季からは左プロップでプレーしている。
開幕からの6戦で3試合に出場。第6節の花園近鉄ライナーズ戦で初先発すると、2月24日の三菱重工相模原ダイナボアーズ戦でも1番のジャージーを着る。
3番から1番への転向は、日本代表のスクラムドクターだった長谷川慎さんがブルーレヴズにコーチとして加わり、進言してくれたことがきっかけだった。
「姿勢がきれいだから、1番もやってみたら」の言葉を記憶している。
自分のことをちゃんと見てくれていると嬉しかった。
「すごく成長を促してくれる人」と感謝する。
長谷川コーチは、1番転向を推した理由を、「デカいのに股関節が柔らかくて、関節に乗った姿勢がとれる」と専門家の目で話す。
「デカくてスクラムの強い1番ってリーグワンにはあまりいません。フィットネスもあるし、痛いタックルもできる。インターナショナルで活躍する選手になってほしいと思いました」
達人のそんな願い通り、茂原は、2月上旬に福岡でおこなわれた日本代表トレーニングスコッド合宿のメンバーに選ばれた。
エディー・ジョーンズ ヘッドコーチは、スクラムと体のサイズに大きなポテンシャルが秘められていると判断した。
1対1の面談でそう伝えられた後は、先の展望にも話が及んだ。
「自分のいまの強みと、これから何をしていくべきか、という話もありました。それを踏まえて自分でアップデートしていき、シーズンを通して体現していきたいです」
同じプロップでも、3番と1番の違いは大きい。
サイズに恵まれた茂原は、ラグビーを始めた高崎工時代から、3番一筋でやってきた。
「3番は(自ら)仕掛けにいきます。でも1番は、どちらかというと3番を前にだしてあげるサポートをします。体の使い方、マインドセットが違う気がします」
取り組んで半年近く。最初は姿勢もとれず苦しんだ。しかし、ここにきてしっくりくるようになった。
スクラムは奥が深い。トライ&エラーを繰り返すことになるだろうが、だいぶいい感じになった。学びと追求は続く。
長谷川コーチは、頼りになる存在だ。
「細かな指導に本当に助けられています。マインドセットの部分も。相手に関して、どういう観点で見て分析するかなど、毎日学びをもらっています」
ブルーレヴズに入って本当に良かった。学生時代、練習に参加してチームの雰囲気に惹かれた。
鍛えられる環境も魅力だった。
「スクラムに力を入れている、そこが心臓部分のチームです。自分をどんどん出していきたいと思いました」
チームメートのことを「スクラムのプロフェッショナルばかり」と言う。
スクラム練習は全員闘志剥き出し。一人ひとりの試合へ出るための貪欲さが成長のエナジーとなっている。
今回日本代表トレーニングスコッドに選ばれたことで、これまで以上にライバルたちの闘争心は熱くなるだろう。
その中で進化を続ける。
「負けないように頑張ります。もっと成長したらチームに還元できるものも増えると思うので」
日本代表への意欲も高まっている。自身の強みを出し、それを国際レベルに引き上げたい。
中大時代は主将を務めた。
最終シーズンは、伝統校が初めて関東大学リーグ戦2部に降格。厳しい現実を突きつけられたけれど、その時に学んだこともある。
仲間たちを引っ張ろうと、責任感を持って全力を尽くした1年を振り返って思った。
「キャプテンとしてもっと自分にベクトルを向け続けるべきだった、と」
それこそがチームを前進させる力になったといまは分かる。
ブルーレヴズの1番として前へ出続ける。