1月7日に幕を閉じた第103回全国高校ラグビー大会で、福井代表の若狭東・敦賀工が、統廃合によるケースを除いて大会史上初めて「合同チーム」での出場を果たして話題となった。
複数校の選手によって編成される合同チームは、部員不足に悩む高校の部員たちにも試合出場の機会を与えることなどを目的に始まり、定着したが、単独チームとの実力差は大きく、また、予選を勝ち抜いても全国大会出場は認められない規定だった。
しかし、規定が緩和された今回、若狭東・敦賀工が早速、歴史的な一歩を刻んだのだ。
そんな合同チームの可能性をさらに広げるユニークな取り組みが、昨年11月19日(日)に行われた。今大会の東京都予選(第二地区)に「合同A」として参加した都国立、都三鷹中等、都武蔵、都大泉の4校に都国分寺も加わった都立5校による「ラグビーフェスティバル」だ。
都大泉のグラウンドに各校の現役部員やOB総勢約200名が集い、現役部員は、都田無工・東京電機大・都豊多摩の合同チームを迎えての練習試合を実施。OBはunder40、over40、タッチフットとそれぞれの体力ステージに合わせた試合を楽しんだ。
5校のうち国立、三鷹、武蔵、国分寺は、1970年頃から定期戦「4校リーグ」を毎年開催。1993年に国分寺の休部により「3校リーグ」となった後に途絶えていた。
しかし、2015年に三鷹の創部55周年を機に行われた3校によるOB戦が毎年の恒例行事となり、2017年には国分寺のOBも加わり、武蔵と国立の現役部員の試合も行われた。
その後、天候不順やコロナ禍で中止が続いたが、2022年にOBのみで再開し、復活2年目の今回は現役部員も本格的に参加。東京都予選で合同チームを組んだ大泉も加わり、よりにぎやかに、活気あるイベントとなった。
幅広い年代にわたるOBたちが集い、それぞれの年齢や力に合わせて楕円球を追い、試合が終われば酒を飲んできょうのプレーや昔の思い出を語り合う。実に痛快で魅力的だ。
今回のイベントでは、複数の高校が集い、現役部員たちも加わることで、そこにさらに広がりと深まりが生まれた。
今回の幹事校の国分寺は、すでに休部から30年が経つ。その間、OBたちはラグビーシーズンになると、花園を夢見て汗と涙を流した高校時代を思い出し、ラグビーの血が騒ぎながら、そこに母校の名前がないことに寂しさも抱えてきた。
しかし、かつてのライバルたちの好意で6年前からOB戦に参加し、現役高校生と交流するなかで、学校の垣根を超えて後輩が生まれたように思った。他の4校のOBたちと同様、部員不足に悩む後輩たちに練習や試合の場を提供し、少しでもやりがいを与えたいと心から思った。
そんな思いから実現したイベントは、現役部員にとっても印象深いものとなった。
国立の主将の藤本大翼さん(2年生)はこう語る。
「代が変わって、合同チームとして初めての試合で、課題の残る試合でしたが、楽しかったです。(OB戦を見て)世代も違うチームで、サインプレーなどができないはずなのに、オシャレなプレーや迫力のあるプレーが沢山あって、面白かったです」
試合後にはアフターマッチファンクションも実施。レフリーからの総評のほか、相手チームからプレーヤー・オブ・ザ・マッチを選んで讃え合ってラグビー文化に触れた。
「相手チームと話す時間があり、少し横のつながりができたような気がして、うれしかったです」(藤本さん)
解散後には、敵味方入り交じり、仲良く駅まで歩いて行く微笑ましい姿も見られた。
3週間後の12月10日から始まった東京都高校新人大会の予選リーグに、国立、三鷹、武蔵、大泉は「合同C」として参加して2勝1敗(うち不戦勝1)、対戦相手の田無工、東京電機大、豊多摩は「合同B」として参加して1勝2敗と健闘した。
藤本さんは、「大会前に試合の機会を設けて頂き、ありがたかったです。楽しかったので、またもっと色々なチームとやりたいです」と語り、今回のイベントの意義を改めて感じたようだ。
合同チームには、「単独では試合に出られないから仕方なく合同でチームを組んだ」という負のイメージがつきまとう。
しかし、今、時代のキーワードは「多様性」だ。学校の垣根も年齢の壁も超え、ラグビーマンたちが集う合同チームだからこそ生まれる新たな絆は、ただOBたちが昔を懐かしむ場ではなく、現役部員たちも交えた多様なラグビーの場ともなるのだ。
全国各地で、母校のラグビー部が休部、あるいは合同チームで参加していることに寂しさを抱いている人も、かつての仲間に声をかけ、母校の練習や試合をのぞいてみてほしい。
そこから生まれるラグビーの絆は、きっとあなたの人生だけでなく、日本のラグビーの将来も豊かにしてくれる。